2024年11月23日( 土 )

文政年間に創業 福岡の蔵から世界へ多くの喜びを伝える(後)

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(株)喜多屋

海外販売力アップを見据えアメリカの人材を喜多屋で教育

 喜多屋は焼酎でも全国に名を馳せる。その代表が「吾空シリーズ」だ。日本航空が国際線のエグゼクティブクラスに10年にわたり採用した焼酎だ。その実績が、あの高島屋を動かした。「バイヤーズ セレクション」というプライベートブランドで、10年寝かせたものをプレミアム焼酎として売り出したのだ。

kitaya2 「今、地酒に勢いがあり、焼酎市場はやや後退していますが、高島屋さんはその次の波を読んで、長期熟成焼酎に着目されているようです。喜多屋はおかげさまで市場の影響もなく、焼酎も堅調です」。

 そんななか、楽しみなことがあるという。それは、海外担当営業を増やせそうなことだ。現在、同社は木下社長ともう1人で海外への営業を行っている。輸出国は15カ国に増えていて日本酒生産量の8%に達し、国内以上に伸び続けている。手が足りないのは目に見えているが、これも戦略の1つだった。

 「5年前から、アメリカの販売総代理店で新規採用される営業マンの研修を喜多屋で行っています。彼らが戻って来ることを期待して席を空けているのです」。木下社長はこれからの蔵は世界で勝負すべきとして、海外の各種コンクールに出品するとともに、国際的に営業ができる人材を育てるべく、取り組んできた。その育て方が喜多屋流と言うべきか、彼らに1年ほど、みっちりと酒造りを学ばせたうえで渡米させるのだ。酒造りを知っていると、営業の際のプレゼンテーション力が全然違うから、というのが理由である。

 「永住権を取ってアメリカに残る人もいれば、ビザの有効期限6~7年の後、日本に帰国する人もいます。何人かに1人は、育った喜多屋に帰ってきてほしい。人材にかけるコストは、たしかに高いかもしれません。でも、これからの時代、蔵のブランド力を高めるために、海外市場はとても重要なのです」。

 すでに次の候補者が、研修生として蔵で修業を積んでいる。嬉しいことに、今年は3人の新人が入ってくる。そのうちの2人は女性で、みな喜多屋で酒造りがしたいと熱い気持ちを持って応募してきた。

 こういう勢いを見せるのも、先代が創業の原点「多くの喜びを人に伝える」ことを見直し、木下社長が存分に腕を振るえるよう「道」をならしてくれたからだと感じている。先々、8代目となるであろう大学生の長女も、冬場はアルバイトで蔵に入る。喜多屋の今後が大いに楽しみだ。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:木下 宏太郎
所在地:福岡県八女市本町374
設 立:1951年1月(創業江戸時代文政年間)
資本金:2,000万円
TEL:0943-23-2154
URL:http://www.kitaya.co.jp

<プロフィール>
kinosita_pr木下 宏太郎
1962年、福岡県生まれ。同87年、東京大学農学部卒業。宝酒造で営業と製造を務めた後、92年に喜多屋入社。99年、代表取締役社長に就任した。小さい頃から祖父に連れられて蔵に出入りし、祖父や父の背中を見て育つ。二女の父。写真とゴルフが趣味。

 
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