2024年11月17日( 日 )

次世代への責任をいったい誰が果たすのか!(4)

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元国務大臣・内閣府特命担当大臣・衆議院議員 村上 誠一郎 氏

 自民党は今、参議院選挙の勝利に酔いしれている。しかし、その自民党は、さらに永田町は、10年ほど前から明らかに劣化し始めている。そして、2012年12月26日の第2次安倍内閣が誕生して、かつての自民党の姿はすっかり消えた。議論を許さない雰囲気が党内に広がり、議論をする気のない議員が増えた。果たして、自民党は将来的に国民の負託に応え、次世代への責任を果たすことができるのであろうか――。近刊『自民党ひとり良識派』(講談社現代新書)で自民党の危機に警鐘を鳴らす、元国務大臣・内閣府特命担当大臣・衆議院議員の村上誠一郎氏に聞いた。村上氏は村上水軍18代目当主で、その村上家の家訓は、「国家の大事には親兄弟の屍を乗り越えて戦え!」である。

(取材日:7月14日)

「NO」が言えない官僚機構

 ――先生は著書のなかでは、以上の3点に加えて、2014年の「公務員法改正」についても言及されています。その点について、少し解説していただけますか。

kokkai4min 村上 今までのお話は、主に自民党、永田町の政治家に関するお話でした。それに対してこれは霞が関のお話です。2014年5月、内閣官房に内閣人事局が置かれました。中央省庁の幹部600人の人事を首相官邸が一元管理するための組織です。この内閣官房長官が直轄する組織によって、キャリア官僚が最も気にする人事を官邸が握ることになりました。私は、「この公務員法改正で、有能な官僚は人事を気にして、政策論争において絶対に本音や正論を言えなくなります。これは自民党にとっても得策ではありません」と大反対しました。

 官僚はもともと政治の良きパートナーで、首相がやりたいことがあっても、厳格に検討して「法律に照らしたらできない」と言える存在でした。しかし、14年の「公務員法改正」以降、とくに最近は、「NOが言えない官僚機構」を官邸がつくり上げてしまいました。政権に迎合する官僚だけが、官邸への出入りを許されるようになっています。有能で、国の将来を心配して、正論を言いたい官僚がいたとしても、その声が官邸に届くことはありません。意見を言えば、官僚生命を絶たれる可能性さえあるのです。「政治に対して直言すると人事に影響するので、誰も本音を言わなくなる」ということが、この公務員法改正の問題点です。

 政治家にとって、官僚は政策実現のためのブレーンです。霞が関は永田町のシンクタンクだったのです。しかし、現在は政治が、官僚の自由闊達な発言を封じるかたちになっており、せっかくの官僚の知識、経験、能力が生かされなくなりつつあります。

読者の皆さんには育て支えてほしい

 ――最後になりました。読者にメッセージをいただけますか。

 村上 私は自らを「ミスター自民党」と言い、30年の長きにわたって地元の自民党支持者の皆さまに支えられ10回連続当選させていただきました。今、私が1点の曇りなく正論を唱え続けることができるのは、私を支持していただいている地元の有権者の皆さまのおかげです。
 だからこそ、時には自民党に苦言を呈してでも、有権者の皆さまの信頼を裏切らないようにしているつもりです。私は次世代への責任を果たすために、喫緊の課題は「「財政・金融・社会保障・外交そして教育の立て直し」と考えています。引き続き、この実現に向けて粉骨砕身努力するつもりです。

 読者の皆さん、とくに中小企業などの経営者、オーナーの皆さんにお願いがあります。ご自身のお仕事も大変とは思いますが、「次世代につなげるにはどうしたらよいのか」を常に考えてほしいのです。私も若い頃は、多くの地元の徳望家の方々に物心ともにお世話になり、育てていただき、今があります。ぜひ、皆さんもそれぞれのお立場で、皆さんの周りにいる政治家でも、経済人でも、教育人でも、育て、強く支えてほしいのです。

(了)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
murakami_pr村上 誠一郎(むらかみ・せいいちろう)
自由民主党衆議院議員。1952年生まれ。東京教育大学付属高を経て、78年東京大学法学部卒業。河本敏夫衆議院議員秘書を経て、86年旧愛媛2区より2度目の出馬で衆議院議員に初当選。以来、愛媛2区で、自民党一筋で10期連続当選。2001年、第2次森喜朗改造内閣で初代財務副大臣に就任。第2次小泉改造内閣で、国務大臣(行政改革・地域再生・構造改革特区担当)・内閣府特命担当大臣(規制改革・産業再生機構担当)として初入閣。2015年の安全保障関連法案採決の本会議を欠席、福島第一原発事故の原因究明なきままの原発再稼働に反対するなど、リベラル保守の立場から政権に正論を唱えている。前衆議院政治倫理審査会会長。現在、自由民主党総務、税制調査会副会長、海運・造船対策特別委員会委員長、四国ブロック両院議員会会長。

 
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