G20開催に秘められた中国とロシアの狙い(1)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
中国の杭州で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議の日本での評価はあまり高くなかったようだ。安倍総理と習近平国家主席の首脳会談も開かれたが、東シナ海や南シナ海の問題は平行線に終わり、これといった成果が確認できなかったためであろう。しかし、中国にとっては、この11回目となるG20は大きな政治・経済的な意味を持っていたことは間違いない。
なぜなら、この会議の直前、北京をはじめ、各地で中国の政府関係者と議論を重ねたが、その都度、G20を成功させるために周到な準備が進められていたことが確認できたからである。日本との交流窓口にあたる責任者は習近平国家主席の言葉を繰り返し、両国関係の重要性を訴えた。
曰く「親望親好、隣望隣好」。日本では尖閣諸島周辺への中国船の領海侵犯や南シナ海での岩礁の埋め立て問題でかまびすしいニュース報道が相次いでいるにもかかわらず、中国側は「互いに友好関係を増進しようと」いうメッセージを繰り出しているわけで、しかも習主席の口癖でもあるという。
G20首脳会議の開会にあたり、習近平主席は念入りに用意したスピーチを内外に向けて発した。その中で彼が強調したのは、「冷戦時代のメンタリティーは時代遅れなものになった。今こそ、我々は協調と融和の精神に基づく新たな安全保障の概念を構築しなければならない」ということ。
同主席は世界経済を再び活性化させるためにと、4つのキーワードを散りばめた演説を用意していた。すなわち、「Innovative(革新的)、Invigorated(活性化)、Interconnected(連動)、Inclusive(包み込む)」という4つの「I」に象徴させるという作戦である。いずれもよく聞く言葉ではあるが、ことさら習主席が訴えたのは何だったのか。その長い演説を分析すれば、今後の中国の動きを理解する上で重要な意味が込められていたことが分かる。
その眼目は、あくまで中国にとって有利な形で、世界経済のあり方を再構築することにあった。具体的には、欧米諸国で広がりつつある反グローバリズムに対抗する流れを打ち出そうとするもの。会議の結果を冷静に見れば、その目論見は見事に達成されたといえよう。とはいえ、中国の思惑や会議外の動きを理解していないと、その意味は分からないに違いない。
残念ながら、日本のメディアは、そうした中国の深慮遠謀には疎いようだ。要は、中国の狙いはロシアと連携し、アメリカ主導の国際金融秩序に終止符を打つことにあり、その先には中国が軍事面においても世界を圧倒するパワーを展開する時代を夢見ているということなのである。
何しろ、中国の歴史上、これほど多数の世界の指導者が国内に一堂に会することはかつてなかった。それゆえ国を挙げて、その場を最大限に生かす方策をしたたかに考え抜いてきたであろうことは想像に難くない。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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