東ヨーロッパには何があるのだろう(29)
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ヘルシンキには似合わない巨大な小便小僧があった
フィンランドの首都ヘルシンキは、コンパクトな街だ。人口は60万人弱で、フィンランド全人口の1割以上の人が住む。周辺の都市圏人口で見ても117万人余り。それでも、100万人以上が住む都市としては世界最北である。
ここには、歩いて回れる範囲にカモメが飛ぶ港があり、大聖堂があり、市場もデパートも動物園もある。何よりも、ここにはトナカイがいる。そう、サンタクロースのソリを引くあのトナカイだ。夏には19時間も続く昼の明るさのなかで、シーカヤックが動き回る入江を持つこの街は、冬になるとその日照時間は夏の3分の1以下の6時間ほどしかない。実際の平均日照時間は、冬場は月間30時間前後だ。ゆっくりと首を絞められるような曇天が続くのだという。何しろ北緯60度だ。当然、雪が降り積もり、国の北ではオーロラも現れる。
ヘルシンキで出会ったガイドの高橋さんは43歳。東京で出会ったフィンランド人の奥さんから“拉致”されて、この街に来て15年になるという。彼は奥さんと2人の子どもの4人家族でこの街に住んでいる。この国の税金は高い。何せ消費税は23%、所得税も20%を超す。しかし、子どもの学費や医療費など、完璧なほどの社会保障制度を備えている。彼の奥さんの仕事は小学校の先生。月収は手取りで30万円時弱だという。彼は子どもたちの面倒を見ながら、アルバイト的に観光のガイドや通訳をしている。暮らしていくにはそれで十分らしい。
この国に暮らす日本人は1,800人余り。決して多くはない。ここで暮らすようになった理由は人それぞれで、高橋さんによると、最年長者は1960年代にバックパッカーとしてやって来て、そのまま居着いた人だという。いわゆるヒッピー世代だ。ちなみにその彼は独身ということだ。
その人が故郷を捨ててこの街にやって来た理由もその居心地も解らないが、漂泊と望郷は旅人の理想だ。おそらく彼は、その理想を今でも満喫しているのかもしれない。しかし、半世紀もここに住んでいると、故郷はすでに故郷ではなくなっているのかもしれない。もしそうなら、彼の理想はすでに過去のものだ。なぜか、そんな彼を何となく夢見る。たいした話ではないが、フィンランドには“ネン”のつく姓が多い。伝説のスキージャンパーニッカネン、同じくジャンプのアホネン。民進党の国会議員“ツルネン”さんは、帰化したフィンランド人だ。
ついでに考えると、ナンヤネンとかタリンネン、トクヤネン。ひょっとしたら“ザンネン”さんもいるかもしれない。(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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