G20開催に秘められた中国とロシアの狙い(4)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
地球温暖化など異常気象への対策にも新機軸が打ち出されることになる。とりわけ注目すべきは再生可能エネルギーの開発、導入レースが加速すること。例えば、アメリカのアップル社は16年2月に15億ドルのグリーンボンドを発行したばかり。対象はアメリカ、中国に加えて21の国に及ぶ。
とはいえ、主要国だけで20カ国。加えて多くの発展途上国の代表も加えてのG20並びにそれに付随する国際会議である。合意が得られたとはいえ、新たな経済金融政策がどこまで実現されるかは依然として不透明と言えよう。
そんな中で、今回、特に存在感が際立ったのは、ロシアのプーチン大統領であった。中国はロシアにとって、EUに次ぐ第2の貿易相手国であり、中国にとってロシアは石油の主要供給国になっている。上海協力機構でも、BRICSでも、また新たに誕生したアジアインフラ投資銀行、そして新開発銀行(NDB、別名「BRICS銀行」)のいずれにおいても、中国とロシアは緊密な協力関係を打ち出している。従来のIMFや世界銀行がアメリカの主導の下で国際的なインフラ整備事業を展開してきたことへの挑戦と言っても過言ではない。
杭州での会議を成功させるため、中国はテロ対策と環境対策に特に力を入れてきた。G20の会期中、9月1日から一週間の間、杭州では大半の市民が姿を消してしまった。なぜかといえば、杭州市が市民に対して、この期間中周辺の観光地のアトラクションの入場料を全て無料にしたからである。また、前後10日間にわたり、市内に入るトラックやトラクターを制限し、朝の2時から真夜中まで市内の道路の交通を遮断したという。
いずれもテロ対策という名目と悪名高きスモッグを減らそうという狙いであった。そのために費やした国家予算は240億ドルと言われている。これは、ブラジルのリオデジャネイロで開催されたオリンピックに50億ドルが投入されたことと比較しても膨大な金額であり、いかに中国がG20の成功に必死に取り組んだかという表れでもあろう。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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