G20開催に秘められた中国とロシアの狙い(5)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
ロシアと中国との関係についてさらに付け加えれば、G20の直前にウラジオストックでロシア中国金融協議会が主催する経済フォーラムが開かれた。この評議会にはロシアから27、中国から29の金融機関が参加している。その目的は、両国の通商貿易の決済において、ドルではなく互いの通貨を使用する機会を増やそうということにある。
習近平国家主席が進めるシルクロード経済交流とインフラ整備に、この協議会が果たしている役割は実に大きなものになっている。なぜなら相互の通貨使用の機会が増えることにより、中国とロシアの間の貿易は年々拡大の一途を遂げているからだ。ロシアにとって、中国との交易の占める割合は、現在13.5%にまで拡大。しかも中国からの輸入品の種類も変化しており、ハイテク関連の製品や機材の占める割合が急増している。
すでに人民元はロシアとの貿易決済ツールとしてだけでなく、世界各国との貿易決済にも幅広く使われており、現在、世界でドル、ユーロに次ぐ、第3位の使用通貨となっている。今回のG20でもIMFのSDRに人民元が加えられたことが事あるごとにアピールされたことにより、中国の国際金融における存在感は確固たるものになったといえよう。
というのも、IMFが新たな通貨をSDRとして認めたことは過去35年において初めてのこと。中国とロシアが金融面で関係を深めることは、これまで以上に人民元の使用量が拡大することを意味している。ロシアのアジア太平洋銀行によれば、同銀行の取引先2,000社のうち、50%が中国と取引をしており、その大半が既にドルから人民元に決済通貨を変更したという。
このようにG20の場を通じて、中国はロシアとの連携プレーを強めながら、BRICSなどの途上国との関係強化に自国の資金力とIT企業の技術力を最大限に生かす戦略を追求しているのである。日本では「G20では確たる成果が得られなかった」といった分析が多かったが、それは日中関係だけに限っての話。中国は強かにロシアと手を結び、新たな覇権争いで主導権を握ろうと大胆な途上国囲い込み作戦を展開していたのである。今後はドル離れが加速し、金(ゴールド)と人民元の存在感が大きくなるのは避けられないだろう。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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