【和歌山市発砲事件】覚せい剤の惨劇に遭った地場土木業者の実像(後)
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収監日に同僚を殺傷
2016年8月29日、石山氏ら従業員4名は、「会社の今後について話し合いたい」という溝畑容疑者から呼び出され、面談の内容から激高したと思われる溝畑容疑者の凶弾に倒れた。同社関連文書などから、同社の主力となる人員構成は溝畑容疑者と同じ年代に集中。重傷を負ったほか2名の従業員も40代。現場で一緒に汗を流してきた間柄だ。事務所内でどのような話が行われていたのか。当事者が話すことができない状況では真相は闇の中だが、実はこの日は、溝畑容疑者が覚醒剤取締法違反で収監される日だった。
溝畑容疑者は16年1月6日、覚醒剤取締法違反容疑により、和歌山地裁で懲役2年の実刑判決を受けた。その後、控訴し、5月20日には最高裁に上告まで行っている。同社関係者は、「溝畑は去年12月くらいから会社に姿を見せなくなった」と話す。公共工事を主体とする同社の事業に悪影響を与えないために一旦身を引いたのだ。しかし、法律を犯し、会社の社会的信用に傷をつけた張本人が今後の経営のことをとやかく言える資格はない。懲役も長期間ではなく、「クスリを抜いて健常者になるには丁度良かったんやないか」と地元の同業者は残念そうに語る。
別の同業者は、「会社側に逃走資金を求めたのではないか」と見ている。溝畑容疑者は建設業許可申請にも携わっており、同社の約3億円という潤沢なキャッシュを持つ財務内容を知らないはずがないというのだ。「会社のことは当然だが、常習者になっている本人(溝畑容疑者)のことも考えて、素直に刑期を務めるように従業員は説得を試みたはず」と語る。石山氏を失っただけでなく、残された従業員が受けた精神的ダメージは大きい。同族でグループを構成し、それなりの実績を積み上げてきた和大興業だが、覚せい剤によって世代交代の予定が大きく狂った。
保釈への疑問
溝畑容疑者の犯行には、和大興業の存在が影響したものと考えられるが、従業員の殺傷に始まり、自殺するまでの常軌を逸した行動は覚せい剤使用の影響が大きいだろう。結局のところ、市外には逃亡せず、犯行現場付近でもある自宅周辺を彷徨っていたことからも計画的とは言い難い。とてつもない罪を犯し、茫然自失となっていたのではないか。
「覚せい剤と拳銃を持ち歩いている何をしでかすかわからない男を野に放つなんて日本の司法制度はおかしい」と憤慨する声もあった。溝畑容疑者が逃亡を続けている間、市内の教育機関は子どもたちの安全確保の対応に迫られた。立てこもり事件発生中は、防災無線で外出を控えるよう求めるといった呼びかけが繰り返し行われ、事件現場周辺は警察によって通行規制が行われ、やむを得ず休業となった店も多い。それらはすべて溝畑容疑者が保釈されていなければ防げていた。
現地を取材した時は、立てこもり事件から10日以上が経過しており、市内は平穏を取り戻しているように感じた。だが、溝畑容疑者が起こした事件について事情を知る関係者の口は重く、共通して困惑の表情が見られた。
(了)
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