2024年12月27日( 金 )

日台産業連携の新たな幕開け!(中)

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活発になったのは90年代半ば頃から

 ――台日産業連携推進オフィス(TJPO)では、2012年3月に発足してから今までどのような活動をされてきたのですか。そもそも、日本と台湾の産業交流の歴史は半世紀におよんでいます。

taiwan 峯岸 TJPOという組織ができたのは12年3月ですが、日本と台湾の企業同士の交流の歴史は半世紀におよびます。とくに活発になったのは90年代半ば頃からだと思います。財団法人資訊工業策進会のなかにも、対日交流促進を行うグループがあり、当時は経済部長(大臣)、次長(事務次官)などが一緒に7~8人程度のミッションを組んで頻繁に日本を訪れていました。資訊工業策進会は名前の通り、主にICTを中心に扱う団体ですが、経済部と連動して行動する時は、ICTから農業に至るまで、あらゆる産業分野に対応しています。

 TJPOでは、発足してから今まで、台日間の大・中小企業、地方自治体などとの連携・交流をサポートしてきました。地方についても、かなり積極的に各県・市の商工会議所にお願いして、セミナーなどを開き、中小企業の皆さんにお集まり頂き、台湾への企業誘致や投資のお話をさせて頂いています。結果的に、2014年10月までに、台日間の産業連携は154件の推進を実現、投資額225億9,100万元(約850億円)に上っています。

三重県と最初の産業連携に関する覚書を

 ――日本の地方自治体と台日産業連携推進オフィス(TJPO)との実績に関してはどのようなものが挙げられますか。

 峯岸 12年3月にTJPOが発足して、すぐ同年7月には三重県と最初の産業連携に関する覚書を交わしています。これが、TJPOと日本の自治体との交流のスタートです。双方は昨年までに、医薬品の開発や医療設備とバイオ製品などの提携を相次いで実現しています。さらに、14年には「台湾と三重県の産業連携推進プラン」に関する覚書を締結しています。その結果、双方の協力関係がさらに深まり、「双方の地方の特色に関する交流」と「お互いの県民往来による観光促進」が協力推進の範囲に加わりました。

 また、13年には「日台観光サミットin三重」を開催しました。三重県の鈴木英敬知事は自ら台湾を訪問するなど、日台交流にとても深い理解を頂いています。さらに、これらの成功例を全国知事会などで、ご披露を頂いたおかげで、関心を持たれた知事が全国から複数、当JTPOをご訪問頂きました。最近の例で言えば、坂井が担当した愛媛県西条市の例があります。

日月潭に、松木幹一郎の胸像があった

 坂井賢司氏(以下、坂井) この7月に、愛媛県西条市の青野勝市長に同行して、台中の彰化県政府や南投県政府を訪問、また台北では産業を主管する経済部工業局などを訪問して参りました。

 愛媛県西条市は四国で工業生産最大の都市です。また豊かな水資源の下、農業、酒造業なども発展しており、裸麦、柿などの農業生産額は全国一位です。調べて行くと、この西条市と台湾は、歴史的、文化的にかなり縁が深いことがわかってきました。台湾南投県魚池郷に、風光明媚な、台湾最大級の「日月潭」という湖があります。この湖にダムがあるのですが、このダム建設に尽力したのが当時台湾電力の社長であった、西条市出身の松木幹一郎だったのです。今でも、日月潭の湖畔には、彼の記念の胸像があります。

 また、同じ台中の彰化県には、現在台湾で唯一残っている、台湾鉄道の歴史的、文化的遺産の「扇形車庫」があります。実は、新幹線の生みの親として知られる十河信二氏(元国鉄総裁)や近鉄「中興の祖」として知られる実業家、佐伯勇氏(元近畿鉄道社長)は共に西条市出身で、市内には鉄道博物館があります。

 今回の訪問では、歴史的、文化的つながりにおいて、双方の認識を深めるとともに、農業・製造業などの産業連携推進についても有意義な意見の交換ができました。彰化県には「扇形車庫」、西条市には「鉄道博物館」があり、将来的には、農産物連携も視野に入れた産業連携を模索していくことも可能かも知れません。今、17年の西条市の修学旅行を台湾にするという話が出ています。台湾と日本との関係では、文化交流をベースに、産業の連携に繋げていくことも可能と感じています。

34の地方自治体や関連機関と交流連携

 峯岸 三重県、愛媛県の例は、ほんの1例で、大企業、中小企業同士の交流は勿論のこと、自治体同士の交流もたくさん進んでいます。TJPOでは、すでに34の地方自治体または関連機関と交流連携チャネルを構築しています。三重県、和歌山県(機械産業など)、秋田県(電子・自動車部品、資源リサイクルなど)、高知県、愛媛県と産業連携に関する覚書を締結しました。また、15年には、三重県、宮城県、富山県、沖縄県などの25の地方自治体または産業機関と機械、環境保護、食品加工等産業の協力に関する商談会を共同開催、214社の台湾企業と83社の日本企業のマッチングをアレンジ、合計353回の商談を実現させました。

(つづく)
【金木 亮憲】

 
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