日台産業連携の新たな幕開け!(後)
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日本企業はコストダウンがとても下手
――日台産業連携の今後についてお聞きします。連携が成功するためのキーワードに「補完」というものがあります。日本企業、台湾企業はそれぞれ、どの点が強くてどの点が弱いとお考えですか。
坂井 一般的に、日本企業、台湾企業の強みは、以下のように分析できます。
【日本企業の強み】
1.技術開発力:先端技術と差別化技術
2.管理能力:組織管理、品質管理
3.国際ブランドの知名度
4.品質に対する信頼度【台湾企業の強み】
1.量産技術能力
2.低コストへの対応能力
3.スピーディーな決断力
4.国際的な人脈:中国大陸や東南アジア市場
(華僑人口は約2,730万人)での華人圏人脈と販路日本の場合は、技術的に進んでいて、信頼度も高く、国際ブランドの知名度も確立しています。その反面、技術者が細かな技術に固執し、良い意味で手を抜くことができません。そのため、コストダウンがとても下手で、商品開発にも時間がかかります。
一方で、台湾の場合は、商品開発が早く、コストダウンがとても上手です。しかし、その反面、じっくり考えず、ともすれば思いつきでやってしまう嫌いもあります。また、日本のような「無から有を生む」発想はあまり得意でないように感じています。お互いにとても上手く補完関係が成立します。溢れるばかりのエネルギーを感じます
峯岸 さらに言えば、台湾の技術者はとても粘り強いエネルギーがあります。たとえば、仕様書に基づき、製造・加工していくのですが、ICT関連では必ずバグが出ます。その際、中国、韓国などでは「仕様書が悪い」の一言で話は終わってしまいますが、台湾の場合は、仕様書を超えて一緒に「どこに問題があったのか、どうしたら、それを改善できるのか」を考えてくれることが多いです。その結果、共同作業で責任のなすり付け合いにならず、効率も良く、良いものが出来上がります。
注目のセンサー技術やロボット関連技術
――「補完」が可能な状態にあることはわかりました。双方は今後、どのように歩みを進めていけばよいとお考えですか。
峯岸 日台産業連携推進や交流は大企業、東京・大阪などの日本の大都市圏を中心に始まりました。90年代後半から2000年代初期までは、半導体関連ではNEC、日立など、ICT関連ではソニー、富士通などの東京圏からの大企業が中心でした。これを第1ステップと考えますと、今は第2ステップの段階にあります。
それは、以上のような大企業はほとんどセットメーカーです。セットメーカーの多くは、自分でデバイス(機器、装置、道具など)を開発していないところも多いのです。本当にテクノロジーや匠の技を求めた場合、中小でもきらりと光る技術を持った企業と積極的に交流を進めたいと考えています。とくにこれから、介護などを中心にあらゆる産業分野で注目されるセンサー技術やロボット技術、またバイオ技術関連などは、むしろ地方の中小企業に、きらりと光る技術が多くあります。今、大企業から中小企業へ、東京・大阪などの大都市圏から地方自治体へ関心が向かっているのは、すごく自然な流れだと感じています。
台湾は第3国市場進出のステップボード
――最後になりました。これから台湾進出や台湾との産業連携を考えている企業経営者(大企業、中小企業)、地方自治体の読者に、エールをいただけますか。
坂井 今、日本の政経環境と内外環境の変化にともない、日台連携の新しい契機が訪れていると感じています。今までの「台湾投資1.0」世代では、日経企業は台湾で工場設立や委託生産を行い、台湾企業は大企業を中心とする日系企業のいわば「手、足」となって協力いただきました。しかし、現在の「台湾投資2.0」世代では、日本の中小企業が戦略パートナーを求めており、台湾市場に注目し、台湾を第3国市場進出のステップボードとして、活用しようと考えています。そして、台湾企業には日系中小企業の「目、耳」となり協力できる体制が整いつあります。
日本を始め、東南アジアの国々に期待を
――「台湾企業をステップに中国市場に進出!」は従来からよく言われていました。新政権になって、この点に何か変化があるとお考えですか。
坂井 ICT関連に限って言えば、中国の貿易額の9割は台湾企業です。今後の展開は見守るしかありませんが、ある意味で政・経を分けて考えないと、双方にとって良い結果は生まれないと思っています。
実は峯岸は私の先輩で、共に台湾新力国際(ソニー台湾)の董事長・総経理の経験があります。私の董事長時代(4年間)には、途中で政権が民進党から国民党に変わりました。当初は、多少変化が起こるのかと懸念したこともありましたが、現実には経済部の大臣の下で実質的に台湾経済を動かしているキーマンはほとんど変わりませんでした。台湾政府の実力や国の発展具合、経済の実力などを分かる人間が、しっかり政策・立案をしています。しかし、当然何らかの影響は避けられないとも思えますので、台湾政府としても、その不足分を補う国として、日本を始め、東南アジアの国々に期待していることは確かだと思います。
過去に、とても多くの成功例があります
峯岸 どこの国とのビジネスでもそうですが、「親日性があるとか、日本人を良く理解している」などと言うことだけで、ビジネスが動くことはまったくありません。きらりと光る新技術とか、精神的なことで言えば、両国の架け橋になる“夢”とかが絶対に必要です。しかし、もしそれがあって、海外展開を望むのであれば、「近くて、日本人をとても良く理解していて、過去に成功例がたくさんある」台湾を選んで欲しいと思います。台湾政府も2005年ぐらいから、もう10年以上「ポストPCは何か」を模索しています。
台湾人は、日本人と一緒になってビジネスを開発し、それを世界に売り込んでいくことが、とくに中華圏などは、言葉を含めてとても得意です。また、朗報としては2017年1月1日以降から、「日台租税協定」が施行・適用され、二重課税が解消されることになりました。
――本日はありがとうございました。日台産業連携がさらに推進されることを期待しております。
(了)
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