ノーベル賞3年連続でも喜べない?困窮する日本の研究者
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ノーベル賞、日本人が3年連続獲得―。ノーベル賞獲得レースは、この季節の風物詩だ。とくに近年、医学・生理学、化学、物理学などの分野で日本人、または日本出身者による受賞が相次いだ。日本人なら誰もがもろ手を上げて喜べるニュースはよいものだ、と思われる方も多いだろう。
しかしこのニュースを、複雑な表情で見つめる人々もいる。他ならぬ大学の現役研究者たちだ。文科省の調査によれば彼らの活動の原資である個人研究費はここ10年減額され続け、今では6割以上の研究者が年間50万円以下の研究費で研究活動を続けている(「個人研究費等の実態に関するアンケート」による)。これは大学が独立採算制を求められ、また少子化による学生減少などで厳しい経営環境に直面しているためだ。
大学の研究者が自由に使える資金が減る一方、企業が大学との共同研究に資金を投下するケースが増えてきた。企業からの研究資金の流入は右肩上がりに増え、2013年度には総額400億円に迫っている(科学技術・学術審議会 産業連携・地域支援部会(第11回)資料による)。
しかし企業側としては、資金を投入する以上その見返りとして商品化できる成果を求める。今回医学・生理学賞を受賞した大隅良典栄誉教授(東京工業大)が「自分の研究がノーベル賞をとれるとは思っていなかった」と語っているような、地味な基礎研究に資金が投じられるケースはまだ少ない。
基礎研究は、すぐ世間に理解されて経済的効果を生む花形技術ではない。しかし技術立国を標榜してきた我が国の土台を形作るものだ。実際、大隈栄誉教授が受賞を果たした「オートファジー」の研究は、約30年前にその端緒があるが、もともと「誰も注目していないものだから、自分が研究してみよう」という動機で始まったもの。花形技術という言葉とはもっとも遠い場所からのスタートだった。それが今では世界中の研究者から数多くの引用を受けることになり、ノーベル賞に先立って「トムソン・ロイター引用栄誉賞」を受賞している。
今後の日本が技術をもって立つ国であり続けるためには、まず研究者がフリーハンドで使える資金を増やすことは必須だろう。そして、長い時間をかけて花を咲かせ、実をつける地道な研究を続ける研究者たちにスポットライトを当てることを怠ってはいけない。現役の研究者たちは、小さくなっていく研究費のパイを争い、予算のひもを握る企業の動向に左右される環境を強いられている。彼らがのびのびと自分たちが望む研究を行う舞台を用意して初めて、次の世代のノーベル賞受賞者が育ってくるはずだ。
【深水 央】
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