200兆円を超える富を生み出す国内油田!(1)
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公益財団法人リバーフロント研究所 研究参与 竹村 公太郎 氏
電話の発明で知られるグラハム・ベルは、1898年に米国地質学会の会長、『ナショナルジオグラフィック』の編集責任者として来日した際、日本列島が「山の多い国土と雨の多い気候」であることに気づき、「日本は豊かなエネルギーを保有している」と水力発電に適していることを見抜いた。これは100年以上前の話であるが、日本列島が持つこの天賦は今も、そして未来永劫変わることはない。多くの人は忘れてしまったが、戦後日本の高度経済成長を支えたエンジンは「水力発電」であった。当時日本には石炭や石油を潤沢に買える資金はなく、原子力発電も軌道にのっていなかった。
今、エネルギー関係者ばかりでなく政治家や官僚を巻き込んで、話題の『水力発電が日本を救う』(東洋経済新報社)の著者、元国交省河川局長で、(公財)リバーフロント研究所 研究参与・(特非)水フォーラム事務局長の竹村公太郎氏に聞いた。竹村氏は国交省の河川局で3つの巨大ダム建設に従事し、人生の大半をダム造りに費やしてきた水力発電の権威である。しかし、これは「新しく巨大ダムを造る」類の話ではもちろんない。また、「反原発・反火力など」の類の話でもない。ここには、目から鱗のレベルではなく、ほとんど多くの国民に全く知らされていなかった事実が書かれている。
水力発電は当たり前のエネルギーなのです
――お忙しい中、お時間を賜りありがとうございます。本日は「水力発電」について、色々とお聞きしたいと思います。まず、今各方面で大変に話題になっている近著『水力発電が日本を救う』を書かれた動機から教えて頂けますか。
竹村公太郎氏(以下、竹村) 私たちの世代は先輩の方々を含めて、戦後日本にエネルギーがなく困っていた時に、「水力発電」を通じて、懸命にエネルギーを開発、供給してきました。その象徴とも言えるのが、かつて三船敏郎と石原裕次郎の共演で映画にもなりました『黒部の太陽』(1968年公開の日本映画で、世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘を描いている)です。私は当時高校生でしたが、この映画を見てとても感動し、ダムを造る土木技術者になろうと心に決めました。
私たち60歳以上の人間にとっては、水力発電は当たり前のエネルギーです。水力発電は日本の高度経済成長を支えた、文字通り“エンジン”でした。しかし、今の若い、特に40歳以下の方は水がエネルギーになることさえ知らないのではないかと思います。山の中で水がとうとうと流れるさまを見る機会も少なくなったので仕方がないのかも知れません。本などを通して知る、頭の中で考える機会はあると思いますが、体験する機会がないので、身近に感じられなくなっています。それは、多くの人が住む都会では、蛇口をひねれば水が出て、スイッチ1つで電気がつく豊かな生活をしているからです。そこで、私は、多くの国民の方に「ダムは日本列島に天が与えた唯一とも言える太陽エネルギーの貯蔵庫である」という事実を忘れて欲しくなかったのです。
現在の水力の何倍もの潜在力を引き出せる
――確かに、水力発電は日本の高度経済成長を支えたエンジンであったという事実さえ知らない人も多くなりました。しかし、先生はさらに「未来の日本のエネルギーを支えていくのは水力発電である」とも言われています。それはなぜでしょぅか。
竹村 私には原子力を否定する気持ちも、火力を否定する気持ちもありません。何よりも、エネルギー全般に関して断定的なことを述べる素養は持ち合わせていません。従って私は今、エネルギー政策を云々しているわけではありません。しかし、50年後、100年後、そして200年後の日本にとって、水力発電は必ず必要になることは断言できます。私たち河川関係者の時間軸はとても長いので、多くの読者は今驚かれたと思います。しかし、勘違いしないで頂きたいのは、次世代への責任を果たすためには、準備はもう今年から始める必要があるということです。今は、石油があり、原子力があります。しかし、石油などは、100年後、200年後まで本当にあるのでしょうか。あったとしても、今と同じ様に安価で手にはいるのでしょうか。現実の資源状況を見れば、危ういことは、私のような門外漢の人間にも分かります。
2015年12月にフランスのパリで開かれたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締結会議)で結ばれたパリ協定では、アメリカや中国でさえ、二酸化炭素削減に積極的な態度へと変わりました。また、途上国も、低炭素社会を主張し始めました。化石燃料の時代から、再生可能エネルギーの時代へと転換することを、世界が感じ始めています。
そんな時代になったら、必ず、水力発電が必要になります。私は「新しく巨大ダムを造る」必要性を説いているわけではありません。私は水力のプロです。天が日本列島の与えてくれた唯一の純国産エネルギーである水力発電の価値を知っています。現存する日本の巨大ダムは半永久的に使うことができます。たとえ100年経っても、ダムは水を貯めて、ダム湖の水を電気に変換できます。しかも、ちょっと手を加えるだけで、現在の水力の何倍もの潜在力を簡単に引き出せるのです。
(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
竹村 公太郎(たけむら・こうたろう)
1945年生まれ。1970年、東北大学工学部土木工学科修士課程修了。同年、建設省(国土交通省)入省。以来、主にダム・河川事業を担当し、近畿地方建設局長、河川局長などを歴任。2002年、国土交通省退官後、(公財)リバーフロント研究所代表理事を経て、現在は同研究所 研究参与、(特非)水フォーラム事務局長。著書に、ベストセラー『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫)、『水力発電が日本を救う』(東洋経済新報社)など多数。関連キーワード
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