大手小売業(日本型GMS)に何が起きているのか(4)
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今後はさらに淘汰が進む
そんな中で今、地方SMの業務提携が全国で進んでいる。M&Aだけでなくその形は様々だが、いずれにしても地方SMが単独で生き残るのはかなり困難になっているということである。そしてこの提携は百貨店からコンビニまであらゆる小売り業態に拡大している。
その理由の第一は「市場の縮小」である。2008年前後にピークアウトしたわが国の労働人口の減少は今後も続いて行く。それは稼ぎ手が消えていくということである。稼ぎがなければモノは買えない。そして、今わが国には「モノへの飢餓」などない。何しろ「断・捨・離」や「終活」が流行語の我が国である。それなりの販売形態だけではモノは売れない。
さらに年金生活者が猛烈な勢いで増えている。彼らは現役時代の3分の1程度の収入で暮らさなければならない。また長寿化により長引く将来の生活のために、それなりの資産を確保しておかなければならないという事情もある。その階層が間もなく、全人口の25%になる。
現役世代も、非正規という安定性に欠け将来的な収入増が期待できない職位での雇用形態を余儀なくされている人々が多い。このような社会背景を考えると小売業にとって楽観的な明日があるはずがない。景気云々以前の問題ということである。デフレと顧客離れの怖さ
表はアメリカ小売業の販売額の推移である。これは全般的な市場の拡大というより、毎年数%のインフレによる物価上昇によるところが大きい。わが国では既存店舗売り上げが毎年数%伸びるというのは例外中の例外だが、アメリカでの既存店舗がこのような伸長を遂げるのはごく普通のことである。表に見えるように、大方の小売り業態が10年前に比べて大きくその売り上げを大きく伸ばしているのがそれを物語る。特にEコマースの伸びが顕著であることがわかる。
US estimated annualより(単位100万ドル)
一方、デパートや書店が置かれる厳しい現実が数字に表れている。これは販売方法や顧客のニーズに合わない業種、業態にいかに過酷な結果が訪れるかということを表しているが、もう一つの見方は、わが国のデフレがいかに深刻な影響を小売業に及ぼしているかということである。
思うような利益が出なくても、企業はその性格上、拡大を続けなくてはならない。拡大の原資を自ら稼がない限り、それは借り入れに頼らざるを得ない。このことはその企業の拡大にも大きく影響する。
今後の市場拡大が期待される東南アジアを中心とした海外への進出も、そこには必ずカントリーリスクが存在する。かと言ってその危険性が薄い欧米での出店にはほとんど勝算がない。それはニトリや良品計画、ユニクロなどの国内有力企業のアメリカ進出がうまくいっていない事例を見るとよくわかる。その理由は複数あるが、それは別として今後のGMSは考え方を180度変えた挑戦が必要である。そのひとつは思い切って売り場面積を縮小することである。さらにMDを顧客主義に切り替えなければならない。市場が硬直し、拡大しない以上、競争相手からシェアを奪うしかない。以前は業態によって分かれていた販売の棲み分けはとうの昔に崩壊している。たとえばコンビニにはもはや若者の店のイメージはない。しかも物販以外のサービスでその存在価値を高めている。ドラッグストアの食品売り場は着々とSMの売り場を侵食している。アマゾンや楽天といったEコマースの伸長も著しい。Eコマースといえば、アマゾンによってアメリカの大手書店や家電販売企業はその業績の低迷に歯止めがかからない。これは何もアメリカだけの話ではない。わが国の小売業でこれから始まるのは本当の競争である。
日本型GMSが従来のように弥縫策を繰り返し、目先の改善に汲々とすることを繰り返せば坪効率の改善は望めない。つまり利益の改善は手にできないということである。そしてそのことは業態生存にかかわる重大事項でもある。(了)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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