2024年11月16日( 土 )

豊洲新市場の構造計算に【耐震偽装】の疑いあり!(1)~水産仲卸売場棟

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協同組合建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

 東京の豊洲新市場の構造計算書を見て、耐震偽装の疑いが濃厚であることが、提供された資料の一部より判明しました。本稿は、すでに完成した建物について、単純に、建築構造に関する【疑義・耐震偽装】の疑いが濃い部分のみを記したものであり、大局的な危険性を指摘したものではありません。手に入った図面・構造計算書のみにより検証し作成した書面です。1棟だけの検証でも、これ程の疑義が存在するので、早急に、すべての建物を深く掘り下げて検証すべきであると考えます。

1.保有水平耐力計算におけるDs値(構造特性係数)に関する疑義
 地下空間で問題となっている水産仲卸売場棟の柱は、鉄骨の周囲を鉄筋コンクリートで囲む形状となっています(梁は鉄骨造)。柱に関しては、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)と認識でき、1階の柱脚(柱の最下部)は地下部分に埋め込まれていない「ピン柱脚」(設計者が計算書にピン柱脚とのコメントを明確に記入)となっています。この点だけを取り上げても、約15%の耐力偽装となっています。

 SRC造のピン柱脚の場合、ベースプレートの下部に鉄骨が存在しないので、これより下部の層についてはRC造として計算するよう、「2007年版 建築物の構造関係技術基準解説書(国土交通省監修)」において規定されています。つまり、SRC造の場合だけの特例である「0.05」のDs値の低減が適用されず、結果的に、1階のDs値(構造特性係数)は上階よりも「0.05」高い厳しい数値としなければなりません。

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要するに、最下階の柱の強度が15%も偽装されているという事です。

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 豊洲新市場の問題となっている水産仲卸売場棟の柱脚には、既製品である「ハイベース」(日立機材)が使用されています。SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の柱脚に使用する場合は、ベースプレートの下部がRC造であるため「非埋込型柱脚」とすべきであることは、先に示した「建築物の構造関係技術基準解説書」で規定されている通りであり、保有水平耐力計算におけるDs値の低減(鉄骨)が適用できませんので、必然的に、1階Ds値は上階よりも0.05割り増した値となります。しかし、豊洲の場合、1階からR階まですべての階のDs値が「0.3」となっています。規準どおりに計算すれば、1階のDs値は「0.35」としなければなりません。Ds値を0.35とした場合、保有水平耐力比(耐震強度)計算は、極端に不利(危険側)となります。

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 1階X方向のDs値は0.3として計算されていますが、Ds値が0.35となった場合、

Qun=Qud×Fes×DS=653,131kN×1.0×0.35=228,596kN

 となります。

 保有水平耐力比(耐震強度)は Qu/Qun=245,818kN÷228,596kN = 1.07 < 1.25 となり、公共建築物としてクリアしなければならない都条例が定める公共建築物の規定である「1.25」を大きく下回ってしまいます。民間の建築物であれば、保有水平耐力比は1.0以上あれば安全とされていますが、1.25を下回っていれば、公共建築物として、もちろんNGです。市場として使い物にならないということです。

 この建物の保有水平耐力比は、全階において、「1.25~1.26」となっています。つまり、公共建築物の最低限の保有水平耐力比とされている「1.25」に対して、まったく余力がない状態であり、偽装を考慮せず保有水平耐力比が1.25としても超低空飛行状態なのです。上記のように、保有水平耐力比が「1.07」であれば、1.07/1.25=0.85と、実質的な耐震強度が85%しかないという驚愕の事実となるのです。

 非埋込型柱脚の1階のDs値にSRC造の緩和規定を適用するためには、それなりの工学的根拠と、余裕のある安全性の確保が必要不可欠ですが、そのような根拠の記載はありません。これは「偽装」ということではないでしょうか? 

(つづく)

※この記事は、豊洲新市場の一部である水産仲卸売場棟に関する設計図書の内、提供された資料に基づくものです。また、私が検証したものは、ごく一部に過ぎません。すべての設計図書が入手できれば、さらに検証をすることは、やぶさかではありません。

 
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