再び注目を集めている石炭火力発電(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
そんななかで、最近、石炭が再浮上するニュースが話題を呼んでいる。ヨーロッパでも、石炭シフトが実際に起こっているし、日本でもそのような兆しがはっきり見えている。
その背景には、どのようなことがあるのだろうか――。アメリカでシェールガス革命が起きていることは、ご存知のことだろう。アメリカでシェールガス革命が起きたことによって、アメリカの石炭の需要は減少し、石炭の価格は下がっている。そこで、アメリカで余った石炭は新しい需要を求めて、ヨーロッパに輸出されるようになった。ヨーロッパでは景気が低迷しているなかで、安い石炭が流入したので、石炭の採用を増やしている。
それに、石炭は埋蔵量が多いので、安定供給という面でも安心感がある。実際に、ドイツの場合は再生可能エネルギーの拡大を強力に推進してきたが、電気料金が年間8,000円くらいアップしたことで、国民は反発している。原子力の場合は日本の事例で、環境には良くとも、事故が発生した場合の危険性がわかってしまったので、推進するのが難しい。後は天然ガスであるが、天然ガスは外国から輸入に頼らざるを得ないので、国の安全を脅かす要因になり得る。そのようなタイミングに、石炭が安くなったので、石炭へのシフトが増えている。もう1つ、日本でも石炭へのシフトが加速している。日本では最近、電力自由化を実現している。以前は、地域の電力会社としか電力の契約ができなったが、現在はどの電力会社とも電力契約ができるようになった。そうすると、電力会社同士の競争が激しくなり、電力会社としては競争に勝つために、原価の安い原料を求めるようになる。
環境よりも目先の原価を大事にした結果、石炭火力発電の増加が予想されている。推計によると、今後、40基の火力発電所が日本で新設されるということだ。そうなると、日本は温室ガスの排出を抑制するどころか、温室ガスの排出を増やす結果をもたらしかねない。それから、もう1つは「クリーンコール」と言って、石炭の二酸化炭素の排出を減らす画期的な技術がある。
発電には普通、瀝青炭を使っている。水分が多く、燃料として不向きである亜瀝青炭、褐炭は今まで発電に利用されていなかったが、水分を乾かし、それに触媒などを加えて、発電効率を上げる技術などが開発され、今は発電の燃料に利用できるようになっている。また、石炭をガス化することで、発熱効率を上げ、二酸化炭素の排出を抑制する技術もすでに開発されている。石炭を使った次世代発電所と言えば、何と言っても、石炭ガス化複合発電(IGCC)である。石炭ガス化複合発電では、石炭はガスになったり、石油になったりして、価格と効率が良くなり、二酸化炭素の排出が抑制される。
既存の石炭火力発電所では、石炭を燃やして熱を発生させ、その熱で蒸気を発生させ、蒸気タービンを回して電気をつくる。ところが、石炭ガス化複合発電では、まず、石炭から合成ガスを作成。石炭に高温で酸素と水を入れ、一酸化炭素50%、水素30%の合成ガスをつくる。その合成ガスでタービンを回して電気をつくる。その後、ガスタービンから排出する熱を集めて、もう一度タービンを回す。これによって、2度電気をつくることができる。
この技術を採用すると、発熱効率は40%以上の大幅なアップが実現できるし、二酸化炭素などは3分1以上減らすことができる。日本は、この技術を利用した石炭火力発電所の輸出を計画している。アメリカ、スペイン、オランダ、日本などがこの技術開発に拍車をかけている。韓国も300メガワットの実証プロジェクトをつくり、実験を進めている。
以上のように、世界は石炭の新しい可能性に熱い視線を送っている。アメリカの情報局によると、石炭の需要は2006年を境に再び増加に転じ、2030年の石炭需要は10兆5,610トンになるだろうと予想している。すなわち、現在の2倍の量である。
クリーンコールは期待通りに成長し続けるのか、もう少し見守る必要があるだろう。(了)
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