2024年07月18日( 木 )

大ピンチに陥った朴大統領、政局は泥沼に(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 今回の一連のニュースを理解するためには、朴槿恵(パク・クネ)大統領と関係者との関係性についての予備知識が必要になる。

 ご存知のように朴大統領は、韓国経済の基礎を築いた朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の娘である。1974年に、朴大統領の母である陸英修氏が銃弾で撃たれ、死去。母を亡くしてから朴大統領はファーストレディの役をこなし、帝王学を身につけた。ところが、父である朴正煕元大統領も中央情報部長によって暗殺されたことで、朴大統領は政界から身を引くようになる。その後、98年に国会議員に当選して政界に復帰するまで8年間、朴大統領は事実上の隠遁生活を余儀なくされていた。

 朴大統領はもともと真面目な性格であるうえに、両親を暗殺で失ったために心に傷を負い、人をあまり信用しなくなっている。母親を亡くした朴大統領が、寂しくて心理的に落ち込んでいた時期に、優しく近づいてきたのは、今回の問題の端緒になった崔太敏(チェ・テミン)氏である。

korea6min 崔氏は1通の手紙を朴大統領に送って慰めたり、その後、精神的に励ましてくれたりしたようだ。警察出身の崔氏は、仏教の僧侶でありながら、カトリックの洗礼も受けたミステリアスな人物で、新興宗教家でもある。
 彼は、心に傷を負っていた朴大統領を支える精神的な助言者でもあった。彼は、自ら大韓救国宣教団という組織をつくり、自分は総裁になり、朴大統領を名誉総裁に就任させた。その後も、いろいろな活動をともにし、朴大統領の信任を得た崔氏は、利権に介入したり不正蓄財をして、朴正煕元大統領の警告を受けたりもした。

 崔氏には6名の夫人がいたが、5番目の妻との間に生まれた崔氏の5番目の子が、今回の渦中の人物になっている崔順実(チェ・スンシル)氏である。崔氏ファミリーと朴大統領の関係は、親の代から2代も続いているわけである。
 崔順実氏と朴大統領との付き合いは40年におよび、朴大統領の唯一の話し相手でもあったようだ。朴大統領は自分の妹や弟よりも、崔ファミリーとの仲をもっと懇意にしているほどである。
 しかし、個人的に懇意にしていることについては何も問題ではないが、意思決定の権限のない民間人が、人事をはじめ、国政の意思決定に大きく影響を与えていたことが明らかになり、大問題になっている。

 崔順実氏の娘の不正入学の疑惑をはじめ、800億ウォンという巨額の資金を大手企業から圧力をかけて集めて設立された2つの財団の問題など、呆れて開いた口がふさがらない。崔氏は、大統領官邸の人事にも深く介入したという噂もある。それにも関わらず、朴大統領は納得のいく説明もせず、知人をかばうような説明をしているだけである。

 崔氏の親子だけではない。話題の中心に、もう1人いる。崔順実氏の元夫である鄭允会(チョン・ユンフェ)氏である。産経新聞の元ソウル支局長・加藤達也氏が、朴大統領の名誉を毀損する記事を書いたということで、裁判を受けたことがある。記事の内容というのは、セウォル号の沈没事故が起きた日の7時間、朴大統領の行方が怪しいという記事であった。朝鮮日報のコラムを引用しながら、この空白の7時間を朴大統領はある男性と一緒にいたのではないか――という記事を書いて、名誉毀損で起訴されたのだ。一緒にいたと推定されたその男性こそが、鄭允会氏である。
 鄭氏は、朴大統領が国会議員に当選してから秘書室長を務め、大統領になってからも主要ポストには就いていないが、“影の実力者”であった。彼に嫌われると、大統領にアクセスすら難しいと噂されていた人物である。

 朴大統領をよく知る人たちは、選挙前から大統領が側近に振り回されるのではないかということを懸念していたようだ。これ以外にも多くの疑惑が浮上しているが、その中心人物が崔順実氏であることが明るみに出ている。

 世界経済が低迷しているなか、韓国経済は厳しい局面を迎えているが、今回のスキャンダルで政治にも激震が走り、今後の行方と真相究明に大きな関心が寄せられている。

(了)

 
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