クックパッドを追われた前社長が、不動産サイト「オウチーノ」を買収(前)
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創業者と経営者の対立はお家騒動の定番だ。料理情報サイト運営のクックパッド(株)は、その典型である。創業者の佐野陽光(さの・あきみつ)氏は経営方針を巡り対立した社長の穐田誉輝(あきた・よしてる)氏を解任。クックパッドを追われた穐田氏は、東証マザーズに上場する不動産情報サイト運営会社の(株)オウチーノを買収する。
穐田氏による買収発表で、オウチーノの株価は暴騰
11月7日の東京株式市場。オウチーノ株は7営業日続伸。一時、前営業日比1,003円高(50%高)の3,005円となり、年初来高値を更新した。10月12日の年初来安値の793円から3.8倍の暴騰だ。10月28日にクックパッド前社長の穐田誉輝氏が同社を買収すると発表したことをきっかけに、買いが集まった。
オウチーノは同日、穐田氏が実施するTOB(株式公開買い付け)に賛同すると表明した。TOB期間は10月31日から12月2日まで。買い付け額の1株807円は28日の終値802円を1%上回る。オウチーノの筆頭株主である創業者の井端純一社長は保有する22%分の株式を売却し、任期満了となる17年3月29日の株主総会をもって退任する。
穐田氏はTOBと第三者割当増資の引き受けを合わせて、オウチーノの株式を最大66%保有することになる。穐田氏が投じる費用は最大14億円にのぼる。第三者割当増資は、穐田氏とともに、クックパッドの前執行役員も引き受ける。前執行役員は堀口育代氏、林展宏氏、菅間淳氏、舘野祐一氏の4人。TOB完了後、オウチーノの顧問に就任する。
穐田氏は8月25日、保有していたクックパッドの株式の大半を売却して、議決権比率は14.73%から2.40%に低下。売却分の9.33%分をクレディ・スイス証券(株)が、3%分は凸版印刷(株)が取得した。クックパッド株の売却代金を、今回の買収資金に充てる。オウチーノ側は、投資目的の出資と説明。穐田氏がオウチーノの経営に参画する予定はないとしている。しかし、額面通り受け取る向きはいない。
17年3月29日の株主総会で、井端社長が退任し、経営陣は一新する。穐田氏と、クックパッドの前執行役員4名で構成される経営チームが、経営を担うことになろう。その期待からオウチーノ株が買われたのだ。
オウチーノも「上場ゴール」で終わった
オウチーノの創業者である井端純一社長(64)は、同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。(株)リクルートセンター(現(株)リクルートホールディングス)、(株)賃貸ニュース社(現(株)CHINTAI)を経て、2003年(株)ホームアドバイザーを設立した。
主力は中古住宅情報サイト。中古住宅流通が主流の欧米と違い、日本は中古住宅の情報が少ない。個人が客観的な判断で中古住宅を買えるように、購入物件を賃貸に出した場合の想定賃料を提示するなど、資産価値を判断できるよう独自指標を提供した。
12年11月、(株)オウチーノに社名変更。13年12月、東証マザーズに上場した。初値は公開価格(3,500円)の2.3倍となる8,050円をつけた。だが、そこがピーク。その後は株価が急落し、「上場ゴール」の典型的な銘柄になった。
不動産サイト掲載物件の物件が伸び悩み業績は悪化。15年12月期の売上高は15億2,200万円にとどまり、最終損益は2,700万円の赤字(前期は1億2800万円の赤字)。
今期も赤字経営が続く。第1四半期(1~3月)は3,800万円、第2四半期(4~6月)も1,700万円の赤字。さらに8月には子会社がモンゴルの建設業者と結んで大型物件の契約について、1億6,000万円の不良債権発生を公表しており、16年12月期通期は3期連続の赤字になることは確実。創業者の井端社長は経営を断念、オウチーノを売却することにした。(つづく)
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