リゾート運営の達人が日本旅館を世界へ(前)
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星野リゾート(株)
4代目経営者の星野佳路氏が観光業界の風雲児として独特の路線を突き進み、リゾート運営で大きな存在感を放つ星野リゾート(株)。これまでどのようなビジネスモデルで成長し、今後はどうしていくのか。その動きを追った。
3つのブランドが主体 ホテル特化リートも
東京都心の一等地である大手町に、今年7月20日、オフィスビルに囲まれて18階分が丸ごと旅館のビルが姿を現した。4代目社長の星野佳路氏が率いる星野リゾートが運営する「星のや東京」だ。
玄関では靴を脱ぎ、館内は畳でつながっている。履物はなく、い草の香りと畳表の感触を直接感じられる。部屋は和風の落ち着いた雰囲気。最上階には大浴場があり、内湯に加えて露天風呂まである。部屋タイプは菊、桜、百合の3タイプ全84室で、料金は1泊7万8,000円からと少々高額。ターゲットは国内外の旅行者で、日本人と外国人の比率を半々にしていくという。将来的には日本旅館を海外展開したい考えだ。
そんな星野リゾートは、長野県軽井沢町で最初の旅館を開業してから、今年で102年目を迎える老舗企業。軽井沢に隣接する同県佐久市で生糸業を営んでいた初代経営者の星野国次氏は、別荘地として発展し始めた軽井沢で温泉が保養の重要な要素だと考えた。そこで1904年、温泉掘削を開始し、14年に「星野温泉旅館」を開業した。当時、旅館には内村鑑三、与謝野晶子、島崎藤村、北原白秋など、多くの文化人が訪れたという。
第二次世界大戦中は旅行需要が減少。だが戦後、高度経済成長にともなって国内旅行が全盛期を迎え、軽井沢に多くの観光客が訪れるようになる。87年にはリゾート法の施行で新規参入者が増えた。同社はその機会を逃さず、企業ビジョンを「リゾート運営の達人」と設定。現在の経営方針に移行し、事業内容も運営分野に特化していった。
2001年からリゾートや旅館の運営事業に取り組み、同時に本拠地・軽井沢では星野温泉旅館の改築計画を進めた。05年に「星のや軽井沢」を開業後、09年「星のや京都」、12年「星のや竹富島」など、地元文化や独自の価値観、生態系を守りながら時代に合わせたサービスを作り上げてきた。
13年7月には、日本初となるホテル特化型の不動産投資信託である星野リゾート・リート投資法人を設立し、東京証券取引所に上場した。投資対象は星野リゾートグループが運営するホテル、旅館および付帯施設だが、なかでも星野リゾートグループの中核である「星のや」「星野リゾート界」「星野リゾートリゾナーレ」の3ブランドへの投資が主体だ。また、ソラーレホテルズアンドリゾーツ(株)が運営するチサンホテルズもポートフォリオに組み入れている。
(つづく)
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