2024年11月28日( 木 )

公費投入50億円 鹿児島・松陽台県営住宅への疑問(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

「所得制限21万4,000円」のカラクリ

 鹿児島県が、地元住民の反対を無視して鹿児島市松陽台町で増設を強行してきた県営第二団地。未就学児がいる低所得世帯の“子育て支援”を目的に、伊藤祐一郎前知事が推進した施策だ。これまで投入された公費は約50億円。実態を調べるため取材したところ、県の主張とはかけ離れた実情が明らかとなった。

ガーデンヒルズ松陽台

 鹿児島県が整備を進めている県営第二団地の土地は、もともと県住宅供給公社が販売中の戸建分譲住宅地「ガーデンヒルズ松陽台」の用地として開発された場所だ。約11haの戸建用地で470区画を販売する予定だったが、170区画程度を売却したところで売れ行き不振に陥り、方針転換。2011年、公社の赤字を穴埋めするため、ガーデンヒルズの中で最大となる土地約5.4haを、県が30億円で買い取った。出てきたのは唐突な県営住宅増設計画。戸建に住む住民からとまどいの声があがったのは言うまでもない。地元自治会は反対陳情を繰り返したが、伊藤前知事は、これを無視。県営住宅には、いつの間にか「子育て支援」の名目が付けられていた。県は10年かけて300戸を建設する予定だ。

月収52万円が低所得?

 2014年から今までに建設された県営住宅は78戸。1期分36戸、2期分42戸が、すでに全戸入居済みとなっている。3期の26戸は現在建設中で、11月から入居者の募集を行っている。県営住宅への入居希望者が戸数を上回った場合は抽選となり、希望者全員に順位が振り分けられ、1番から順に希望の物件を選択していくという仕組み。間取りは2LDK~4DKまであり、それぞれの間取りと世帯収入によって家賃が変わってくるという。h1_s そこで問題になってくるのが入居条件となる所得制限である。県土木部建築課住宅政策室の説明によれば「松陽台県営住宅の所得制限は月収21万4,000円以下」。しかし、現地で取材したところ、共働きが多く、ほとんどの世帯が月収21万4,000円を超えていることが分かった。「旦那の収入だけでも21万4,000円は大幅に越えている」という家庭もある。県営住宅の駐車スペースは、一戸につき「1.5台」(県側説明)。実際、車を2台所有しているとみられる家庭が多く、所得制限が守られている様子ではない。鹿児島県のホームページに公表されている県営住宅の「募集案内」を確認してみると、21万4,000円をはるかに超え、月収50万以上でも低所得者向けの県営住宅に住める仕組みとなっているのだ。h2_a 役所が言う所得制限とは、世帯員数によって月収入の上限が変わってくるというもの。最高額は6人世帯の52万1,999円。月に52万円の収入を得られる世帯が、「低所得者」と呼べるのか疑問だ。県は、公営住宅法に基づく設定だと言うが、どう考えてもおかしい。

(つづく)

 
(2)

関連記事