2024年11月28日( 木 )

「失政」の今後~公費投入50億円 鹿児島・松陽台県営住宅への疑問(5)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 現地取材で浮かび上がった、鹿児島市松陽台で進む県営住宅増設計画のさまざまな矛盾。所得制限を設けた低所得者向け住宅としながらも、月収50万円以上の世帯が入居できるおかしな仕組み――。“子育て支援”を謳いながら、保育園も小学校もない周辺環境――。公費50億円を投入した県営松陽台第二団地の、これが現状だ。あらためて、県営住宅増設の是非を問う。

松陽台県営住宅の実態

kyousitu “子育て支援”を名目に、50億円という膨大な公費をつぎ込んだ県営松陽台第二団地。子どもを預けるための保育園も、小・中学校もない現状には驚くしかない。

 一番近い「松元小学校」は受け入れの限界。施設整備が間に合わない状況になりつつあるという。残り200戸の増設が予定されている県営住宅だが、児童の受け入れ先は事実上満杯。子育て支援とは縁遠い愚行で、割りを食うのは納税者だ。

 松陽台には歩いて行けるスーパーや飲食店が皆無。低所得者にとっては「住みにくい」場所でしかない。「ガーデンヒルズ松陽台」に誘致される約束だった商業施設や学校の建設は未定。公社が宣伝していた“街づくり”を信じて松陽台に戸建用地を買った住民にとっては、思いもよらぬ展開となっている。

 新たに建設された県営住宅は期間限定。入居期間は原則10年で、子どもが小学校を卒業するまでの仮の住まいでしかない。「中学校に上がる前に出ていけ」ということ。鹿児島県にとって、中学生は“子育て支援”の対象ではないのだろう。入居者は、進学に備え一番物入りの時期に、引っ越しを余儀なくされるのである。

 県が県営住宅の増設計画を推し進めたのは、県住宅供給公社の赤字を穴埋めするために購入した土地に、理由付けするため。現状を見る限り、明らかな「失政」と言わざるを得ない。

新知事の判断は?

 「失政」を推し進めてきた伊藤祐一郎前知事が落選し、県政刷新を訴えた三反園訓氏が新知事に就任した。「みたぞのさとし後援会」のホームページを開くと、最初に目に入るのが「県民の視点で 県民と変えていく」という言葉。三反園知事が本当に県民の視点に立つのならば、まず、この松陽台県営住宅の問題に目を向けるべきだろう。
 現在建設している第三期を含め、県営松陽台第二団地は104戸。これ以上、増やす必要はないはずだ。

(了)

 
(4)

関連記事