表面化した詐欺被害は氷山の一角(2)~逮捕で詐欺を知る
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NetIBNewsの読者から悲痛な叫びが届いた。2016年5月、「詐欺容疑で福岡市南区の通信電話会社代表を逮捕」という記事を掲載したが、8月中旬この記事を読んだ読者から1通のご意見メールが送られてきた。やりとりを交わす中で、福岡県警が発表した事件のほかにも被害者がいることが判明した。
弱みに付け込む詐欺師
といっても、詐欺師は突如として出現したわけではない。市瀬は同美容室のお客だったのだ。美容師にとって、髪を切るだけが仕事ではない。施術の間、世間話も身の上話もする。その結果、距離が近くなったA氏と市瀬。A氏が「従業員の横領、そしてその弁済が遅れている」という悩みを打ち明けると、市瀬はお客から詐欺師の顔に変わった。逮捕容疑と同様のシナリオが展開されていく。市瀬はA氏に「保証協会に加入しておけば、保証協会が回収してくれる。協会へ申請する重要書類の作成に費用がかかるが、その費用は返金される」と話し、A氏は現金40万円を市瀬に渡している。さらに、市瀬は「うちの(会社)の顧問弁護士は腕が立つから、任せてみないか」と畳みかけて、弁護士費用として現金30万円をA氏から巻き上げていた。領収書など、あるわけはない。この時点で、A氏は気づくべきだった。しかし、精神的に追い込まれ、正常な判断ができない状態であったのだろう。逮捕容疑の被害者女性も状況的には同じ。人の弱みに付け込んで、金を出させる手口である。
逮捕で詐欺を知る
市瀬の悪事はこれだけにとどまらない。「A氏は詐欺に気づいていない。まだ取れる」――そう考えたであろう市瀬は「保証協会に加入するためには、クレジット会社と契約して、支払い能力を証明しないといけない」との話を持ち掛ける。商品やサービスがないことには、ローン契約ができない。A氏は市瀬からHP制作会社を紹介され、HP制作費として、ローン契約を促される。市瀬、HP制作会社の担当者は同じ席で「ローンは組むが、製作費は無料なので、費用はかからない」のような説明を繰り返し、A氏は契約してしまった。もちろん、これも詐欺。すでにA氏は自前のHPを開設しており、無駄なHPを新設することに。このローンの返済が始まった直後、市瀬の逮捕をニュースで知ることになる。HP制作会社に解約を申し出ても、当時の担当者はすでに退職しており、残っているのは契約書のみ。客観的証拠だけでは、A氏が自らの意思でHP制作会社に仕事を依頼し、契約。ローンを組んで返済しているとしか見られず、訴えを起こすのは難しい。
5月の逮捕容疑では、額面27万円を騙し取った疑いとされているが、関係者によればその被害女性から総額数千万、さらに泣き寝入りしている被害総額を合わせると、億単位となるとの話もある。A氏の場合、経営者としての知識不足は否めないが、だます側が最大の悪である。まさか身近なお客が詐欺師だとは想像もできなかっただろう。そして、悩みを誰にも打ち明けられず、思い詰めていたはずだ。冷静な判断ができる第三者に、一言でも相談していればこんな結末を迎えることはなかっただろう。
(つづく)
【東城 洋平】▼関連リンク
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