地雷撤去から「自立支援」活動へ(後)
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一般財団法人 カンボジア地雷撤去キャンペーン 理事長
大谷 賢二 氏就職援助で自立支援を
これまでの活動で、年間の地雷被害者数は着実に減少してきた。とはいえ、当然ながら地雷被害者の総数は累積で増加していく。大谷氏が次に目を向けるのは、そこだ。
カンボジアにはトンレサップ湖という巨大な湖があるほか、メコン川も流れているが、その周辺を離れれば少雨地帯が広がり、水の確保が難しい環境となっている。大谷氏によれば、カンボジアの農村部では健常者でも仕事に就くのが困難な状況だ。水を汲み、農地まで移動するといった手間が増える雨の少ない地域で被害者が農業に就くのは、さらに困難な状況だ。
地雷被害者に対しては、隔離政策のようなものがとられ、たとえば、プノンペンから約110km南にあるデチョウ村のような地方の農村部に集められているという。そこで被害者たちの生活は一定保護されているが、自分で働いて自分で生活の糧を得ていくことはできない。
なぜ就職支援なのか――。大谷氏は「食べるのに困らなかったとしても、人から与えられて生かされるのでは人生の実感もなく、人間としての誇りも失います。自分で働いて自分で稼いでいくことこそが、自身の誇りを取り戻し、また差別の解消につながっていく」と強調する。
現在、CMCはデチョウ村で、素材や色の異なる糸を自由に組み合わせて布地を織る「さをり織り」という、大阪で生まれた織物製作の導入を進めている。大阪本部で研修を終え技術を取得したカンボジア人を含め、現在2名の指導者がおり、自立支援に役立てていく考えだ。その2人が作った「さをり織り」は、カンボジア日本人材開発センター(CJCC)が毎年開催するジャパンウィークで高い注目を集め、カンボジアのテレビ放送でも取り上げられた。織機などの設備は資金面の都合上からまだ十分でないが、軌道に乗りつつある段階だ。
最終目標は国内での相互扶助
カンボジアでは05年の制度導入で経済特区(SEZ)の開発が進み、現在21カ所設けられている。「チャイナ・プラス・ワン」や「タイ・プラス・ワン」とも言われるなかで、カンボジアに拠点を移す日系企業も増加している。工業であれば、天候に左右される農業と異なり収入も安定するとして、大谷氏は就職斡旋にも動き始めている。
しかし、「根本的な部分を変えていかなくてはならない」と大谷氏。「カンボジア人自身がカンボジア人を助けることが、より重要です。自立支援は被害者たちを『支援漬け』にしてしまうこととは違う。経済的に豊かな都市部のカンボジア人の多くは、地雷問題のことを知らない実態がある。彼らへの啓発活動を通して、都市部に住む富めるカンボジア人の青年たちが、辺境の貧しいカンボジア人をサポートするようにしていきたいと考えています」。
(了)
【吉井 陸人】■INFORMATION
理事長:大谷 賢二
所在地:福岡市早良区西新1-7-10
設 立:2011年4月
(結 成:1988年5月)
TEL:092-833-7676
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