自営業者の没落(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、なぜ韓国ではこれほど自営業者が多くなっているのか――。
韓国経済は、財閥に経済が集中している。ところが、財閥系企業に正社員として入社するのも狭き門だし、一度辞職すると、また再就職するのはもっと厳しい。
筆者はベビーブーマー世代であるが、筆者の周りで会社勤めをしている人は、ほとんどいない。ほぼ全員が自営業を営んでいる。もう1つの原因としては、私は韓国の社会構造を挙げたい。韓国人の教育熱は異常で、教育費の負担が大きすぎる。家計を圧迫する大きな要因の1つに教育費がある。この問題を解決するために韓国政府はいろいろな政策を打ち出したが、いまだに解決には至っていない。
もう1つは、韓国の結婚制度である。韓国では、子どもが自分の力で結婚するのではなく、親が面倒を見ることが多いため、子どもの教育と結婚にかかる費用で、よほどの資産家でない限り、親は老後の準備ができない。韓国でも1988年に国民年金ができたが、まだ歴史が浅い。私の周りを見ると、平均月90万ウォンくらいしか受給できないので、年金だけでは生活ができない。
そうなると、人は老後のため無理やり何かをせざるを得なくなる。さらに事業準備として、緻密な計画などが必要であるが、少数の人を除けば、韓国人は「とにかくやってみる」というタイプの人が多い。それに韓国には、日本と決定的に違う文化がある。日本では親にもお金を借りるか、親にはお金のことを言わない人が多い反面、韓国では事業資金を親とか兄弟、親戚に金銭的な協力を仰ぐケースが多い。自分で汗水たらして手にしたお金であれば、管理面も徹底するが、人間の悲しいところは、人のお金に対しては、どうしてもルーズになりがちだ。
なお、周りの人も協力しないと人間関係がまずくなるので、どうしても協力せざるを得ない。その結果、事業の失敗で周りにも迷惑をかけ、巻き添えにするケースも多い。不況なので、大手企業は投資を控える。採用する人も減らす。若い人は就職が難しくなる。就職できないと、消費ができない。韓国の40代の場合には、住宅コストが上昇して、その負担で消費に回すお金がない。60代は子育てのために自己を犠牲にした結果、あまり余裕がない。老後に備えて自営業を始めたが、商売はなかなか難しく、むしろ大きな借金だけを抱えることになる厳しい現実が待っている。結果的に自営業は苦戦し、廃業に追い込まれることになる悪循環が繰り返されている。
それに、今まで韓国の経済を牽引してきた石油化学、造船、海運、鉄鋼などに赤信号が灯っている。このような時期に起きた朴大統領の一連の疑惑に、国民は怒り心頭だ。これを機に、韓国の国民は“政経癒着”などをなくし、国を根本から変えるきっかけにしようとしている。
(了)
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