2024年11月14日( 木 )

一級建築士免許裁判、控訴した仲盛昭二氏に訊く(4)~潜在する「偽装」

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 一級建築士免許取消処分をめぐる訴訟で、異なる構造計算プログラムによる再現計算や工学的根拠の不提示など、国の不自然とも思える対応を指摘する仲盛氏。その一方で、建築物における「偽装」の問題は、大手企業の物件にも潜在していると話す。

豊洲市場の耐震強度不足問題

 ――「偽装」といえば、仲盛さんが代表理事をされている協同組合建築構造調査機構は、「豊洲市場の構造計算に偽装がある」と、市場の建物を設計した日建設計と、建築主であり建築確認行政である東京都を刑事告発されたようですが。

仲盛 昭二 氏<

仲盛 昭二 氏

 仲盛 豊洲市場の水産仲卸売場棟は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)という構造です。1階の柱の足元である柱脚には大きく2つの形式があり、柱脚の鉄骨を地中梁・基礎部分に埋め込む「埋め込み型柱脚」、柱脚の鉄骨を地中梁・基礎部分に埋め込まない「非埋め込み型柱脚」(いわゆるピン柱脚)に分かれます。この建物の柱脚は「非埋め込み型柱脚」(ピン柱脚)となっており、この場合、保有水平耐力計算における構造特性係数(Ds値)を低減してはいけないことになっています(低減は埋め込み型柱脚のみ)。
 非埋め込み型柱脚であれば、本来、1階のDs値を「0.35」とすべきところを、日建設計の構造計算書では、Ds値を「0.3」と意図的に低減し、必要保有水平耐力を17%も過小に偽装していたのです。この建物の1階の保有水平耐力比(=耐震強度)は、公共建築物として要求される基準値である「1.25」ギリギリですから、これが17%少なくなると、完全に基準値を下回り、耐震強度不足となってしまいます。
 また、地震による建物の変形を示す「層間変形角」は、建築基準法施行令により、「1/200」以下である事が規定されていますが、この建物では、規定値を超えた変形角となっています。建築基準法施行令に違反した状態だと言えます。
 日建設計は、国内で最大規模の設計事務所です。日本を代表する設計事務所ですから、私も、日建設計の技術レベルもコンプライアンスも国内で最高だと、根拠もなく信じていました。しかし、フタを開けてみれば、信じられないような偽装を行っていたのです。東京都民や国民を欺いた行為に憤りを感じ、刑事告発に踏み切った次第です。

鹿島建設のマンションの建替え訴訟

 ――SRC造の柱脚の偽装は、豊洲に限ったことですか。

 仲盛 現在、協同組合建築構造調査機構においても、全国の物件について調査中です。
 たとえば、現在、建替えを求める訴訟が審理中である、福岡県久留米市の「新生マンション花畑西」(原告:区分所有者、被告:鹿島建設ほか)はSRC造であり、非埋め込み型柱脚ですが、やはり、構造特性係数(Ds値)が偽装されていました。施工業者も簡単に気付くような偽装を、鹿島建設も見落とし、偽装をされた状態で建設されたため、耐震強度不足の原因の1つになっています。
 ちなみに、耐震強度不足の原因はほかにいくつもあります。施工における「図面に明記されている梁の30カ所におよぶ未施工」「鉄筋のかぶり厚さ不足(かぶり厚さゼロの箇所も多数)」「コンクリート内部に木片などの異物混入」「コンクリート中性化の異常な進行」など数多くの施工の不具合が重なり、耐震強度が35%という状態になっています。
 耐震診断による検証(第三次診断)も行いましたが、目標値「0.48」に対して、「0.116」という結果でした。耐震強度に換算すると、0.116/0.48=24%という信じられない、非常に危険な状態となっています。
 耐震診断では、目標値の半分(この場合、0.48/2=0.24)を下回る建物は、補強による改修が不可能ということで、除却しなければならないことになっています。

 ――耐震強度が50%を下回っているマンションなのに解体しなくていいのですか。

 仲盛 このマンションの裁判において、設計事務所は、「勝手に印鑑を持ち出され、書類に押印され、知らないうちに設計者にさせられていた」と意味不明の答弁をしています。
 施工業者である鹿島建設は、設計図に記載されている重要な梁を、30カ所も施工していないという、現代のわが国の建設工事のレベルでは考えられないような施工ミスを犯していながら、「図面通りに施工をした」と、ミスを認めようとしません。マンションの現場に行って、外部階段と外廊下部分を見上げれば、素人にも分かるような単純なミスであるにもかかわらず、未だに、現場を確認しようともしないのです。
 鹿島建設は、施工ミスを認めない一方で、下請業者に対しては、「下請けの施工ミスで、元請の鹿島建設に損害が発生した。賠償金を払え」と、損害賠償請求訴訟を起こしていました。この鹿島建設の姿勢は、卑しくも、わが国を代表する超大手ゼネコンの姿からは程遠いものであると言わざるを得ません。

(つづく)

 
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