2024年12月23日( 月 )

一級建築士免許裁判、控訴した仲盛昭二氏に訊く(6)~権力の濫用

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 一級建築士免許取消処分をめぐり国と裁判で争う一方、大手企業や行政に虐げられる住民の側に立ち、本物の「偽装」を追及している仲盛氏。長く厳しい戦いを通じて見えてきたものとは――。

問答無用の処分ありき

 ――一級建築士免許の件に戻りますが、14件の設計が行われたのは、平成12年~13年ごろであり、すでに15年経過しています。建築士法違反の時効は5年ではないのですか。

saiban1 仲盛 国が定めている「一級建築士の懲戒処分の基準」には、建築士法の懲戒事由に該当する行為の時効は5年とされています。今、質問されたように、私も「なぜ、時効ではないのか?」と疑問に思います。国の主張は、「時効については、『懲戒事由に該当する行為が終了して5年以上経過し、(中略)処分しないことができる』ということであり、本件には適用しない」というものです。
 処分理由は「その他の不誠実行為」です。対象となった14物件の構造上の安全性も確認されており、かつ、処分を判断した根拠とされる資料さえ存在していません。これが、はたして、時効適用の例外にするほどの行為なのでしょうか? 構造耐力が不足しているのであれば、時効を適用しないことも理解できなくはない(それでも本来は時効を適用すべき)のですが、当初から、国の態度は、法律の正当なる適用を無視した「問答無用の処分ありき」で決定されていたように感じています。

 ――15年以上も前の物件について、仲盛さんは、設計内容を記憶されているのですか。

 仲盛 私は普通の人間ですから、15年以上も前の物件の設計内容までは覚えていません。ましてや、サムシングでは、50人ほどの社員がいて、累計で1万5,000件ほどの物件の構造設計を行っていました。私は、各物件の大まかな設計方針を設計チーフや担当者と打合せ、構造図のチェックは行っていましたが、詳細な設計内容については、各設計チーフが中心になって設計を進めていました。全国の、数十人規模の設計事務所では当たり前の業務体制であったと思います。
 国からは、14物件の計算内容についての説明を求められましたが、記憶に残っていないので、説明のしようがありません。「説明しない」のではなく、「記憶がないので、物理的に説明ができない」のです。
 当時の設計図書の保管義務期間は5年とされていました。このくらいが、人間の記憶力の限界ではないでしょうか。保管義務期間や時効の5年という期間も、このあたりが根拠になっているのではないかと思います。

 ――仲盛さん以外に、14物件のことを知っている人はいないのですか。

 仲盛 14物件に関して、当然のことながら、私の記憶に残っていないので、関係者から事情を聞くことを、国に提案しました。
 関係者とは、「サムシングに構造設計を発注した元請設計事務所」「建築確認審査を担当した行政庁の職員」「サムシングの構造計算担当者」です。
 彼らは、各物件に直接関わっていますので、私よりも、記憶に残っている度合いが強いはずです。彼らから事情を聞けば、構造計算書に関する経緯が、多少は明らかになるでしょうし、彼らの責任についても検討すべき事態になるかもしれません。私も、彼らからの聴取結果によって、自身の記憶を呼び戻せる部分もあるかもしれませんので、協力を惜しまないという気持ちでした。
 しかし、国が、私の提案を受け入れることはなく、関係者から事情を聴取することもなく、私の記憶が薄いことを、これ幸いとして、強引に処分を下したのです。なぜ、国は、14物件に直接携わった関係者から事情を聞こうとしなかったのか。一般的に、真実を探るためには、考えられるあらゆる手段を以って情報を収集するのが当然の手法であるはずです。
 「関係者から事情を聞く」こんな簡単なことさえ行わず、すべて「推測」を根拠にして、「免許取消」という「一級建築士の死刑」ともいえる重大な処分を決定するという行為は、国家権力の濫用に他ならないと思います。

 ――14物件は、適切に建築確認を受けているのですか。

 仲盛 14物件とも、適切に建築確認を受けているはずです。建築確認において、建築関係法令に適合していることを建築主事が確認したので確認済証が交付されています。
 14物件の建築確認の審査において、「不整合」という指摘は受けていませんし、サムシングが構造設計に関わった1万5,000件全ての建築確認審査において、「不整合」という指摘を受けたことは、一度たりともありません。
 さらに、今回の問題に関連して、14物件を所管する行政庁により、再度、安全を確認されています。つまり、行政により2度も安全を確認されているのです。
 国は、14物件の所管行政庁(福岡県、佐賀県、福岡市)の審査能力を、よほど低く見ているのでしょうか。客観的に見れば、推測計算書の作成を民間に外注する国よりも、上記の行政庁の方が、建築に関する審査能力は高いように感じるのは私だけでしょうか。

 ――仲盛さん自身の裁判、久留米市の欠陥マンション裁判の技術支援など、いくつも裁判に関わっておられますが、今後の展開はいかがですか。

 仲盛 私の一級建築士免許に関しては、「取消処分の根拠である計算書が存在せず、後付けで作成されたという、処分根拠の時系列の問題」「5年という時効の問題」「処分の点数を加算する事由の正当性」「関係者から事情聴取をしない」などの問題があり、控訴審において、これらの問題を追及していきます。関係者の証人尋問も考えています。
 そもそも、何十年にもわたり、建築確認において1件たりとも、行政から指摘されていないことに対して、国が、後付けで指摘すること自体が、法適用の公平性を欠いたルール違反ではないでしょうか? 国が、検証計算書を偽装までして、執拗に私をいじめ続ける、その理由がわかりません。これは、甚だ理不尽な国による個人攻撃であり、人権問題です。到底、納得できるものではないので、これからも徹底的に戦っていきます。
 久留米市の欠陥マンション裁判については、原告の区分所有者や住民の方々のためにも、1日でも早く解決して、安全な環境で生活ができるよう、私にできることは、総力を挙げて、弁護士に協力していきたいと思っています。

(了)

 
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