2024年11月23日( 土 )

鹿島建設・耐震偽装マンション問題、第三次耐震診断の結果は?(1)

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 当サイトでは2016(平成28)年10月21日より3回にわたり、久留米市の新生マンション花畑西の「耐震偽装及び施工不良マンションの訴訟」に関して、建築構造の専門家である仲盛昭二氏へのインタビュー記事を連載した。
 その後、原告(区分所有者、管理組合)側は、被告(久留米市や鹿島建設)がかねてより要求していた、「第三次診断による耐震診断」を実施した。そこから導き出された数値は、提出済の「第二次診断」による耐震診断の値をさらに下回り、耐震強度不足を決定づけるものとなった。あらためてこのマンションの解体・建替えが、一刻の猶予もない、緊急性を要していることが判明したのである。
 原告側は、今回の耐震診断の結果を、久留米市を相手取った裁判2件と、鹿島建設および木村建築研究所を相手取った裁判の合計3件の裁判に、証拠として提出した。
 被告が最後の切り札と考えていた「第三次診断による耐震診断」を原告側が実施した結果、建物が補強工事の範疇ではなく、解体が決定づけられる基準ラインを大幅に下回っていることが再確認される結果となったことで、裁判の判決の行方とともに今後の被告側の対応が注目される。
 今回のインタビューでは、先日提出された第三次診断による耐震診断の結果などを中心に、仲盛昭二氏に話を伺った。

 ――第三次診断による耐震診断を実施するに至った背景について説明をお願いします。

仲盛 昭二 氏<

仲盛 昭二 氏

 仲盛昭二氏(以下、仲盛) 本件マンションは、現在、福岡地方裁判所において、久留米市を相手取った「建物除却命令義務付請求」および「損害賠償請求」の2つの訴訟が審理中であり、また同時に、同地裁久留米支部において、鹿島建設、木村建築研究所を相手取った「損害賠償請求」訴訟が審理中です。
 平成25(2013)年に、私ども協同組合建築構造調査機構が実施した構造検証により、木村建築研究所等の設計における構造計算の偽装が原因で耐震強度(保有水平耐力比)が35%以下であることが判明しました。
 さらに、鹿島建設の施工における数々の工事ミスが重なり、建物強度と耐久性において大幅な減損が判明しました。
 本件マンションは平成6(1994)年に新耐震基準により設計され、久留米市より建築確認済証を交付された建物です。新耐震基準に基づき設計された建物の耐震性の検証は、当然のことながら、新耐震基準で検証されてこそ、法的にも耐震性を合理的に判断できるものです。しかし、久留米市および鹿島建設らの被告は、旧耐震基準により設計された建物(昭和56年6月以前に設計された建物)の強度判定の救済措置として用いられる耐震診断による検証を強く主張していました。
 原告はすでに、二次診断による耐震診断を提出しています。二次診断の結果は、目標値「0.48」に対して「0.167」という結果であり、目標値の半分(0.24=解体の基準ライン)を大きく下回っていました。
 さらに今回行った第三次診断の結果は、目標値「0.48」に対して、「0.116」という結果でした。これは、耐震強度に換算すると、目標値の「24%」に過ぎません。「構造計算」のみならず「耐震診断」の検証でも本件マンションが解体の基準ラインである50%の半分以下の強度しか有していない危険な建物であることがあらためて立証されました。これにより久留米市が、本件マンションの解体を指示する根拠が出揃ったのです。

 ――「構造計算による検証」と「耐震診断」の両方で、基準ラインを大きく下回っていることが立証されているのに、久留米市は、マンションの安全性についての判断から逃げているということですか。

 仲盛 原告は、設計当時の規準に基づく構造検証が法的に正論であるとして耐震診断(二次診断)の結果を提出し立証したのですが、久留米市は、「二次診断よりも高度な三次診断による耐震診断の結果でなければ、建物の安全性を判断できない」と主張してきました。しかしこの久留米市の主張には大きな矛盾があります。
 そもそも、二次診断で大幅にNGの建物が三次診断でOKになることなど、構造計算の知識があれば考えられない発想なのです。久留米市の都市建設部には、そのような知識を持った技術者が不在なのでしょう。一方、それをあえて要求してくる久留米市の思惑としては、「原告は経済的に大きな負担を強いられる三次診断まで実施することはまずできないだろう」と、原告の足元を見た要求であったのかも知れません。
 その要求に応じられない原告に対して、久留米市は、「三次診断が出せない原告の状況をもって、建物の安全性が立証されたことになる」と、勝手に判断し、裁判の行方が自分たちに有利に運ぶと考えたのではないかとも推察されます。しかし、それは、久留米市が構造知識を欠くがゆえの大いなる勘違いの判断でしかありません。今回原告が行なった三次診断の結果がそれを立証しています。

 ――原告が、三次診断による耐震診断に踏み切ったのは、なぜですか。

 仲盛 久留米市は、遵法とは認めがたい耐震診断の適用を、本審理において執拗に求め続けたため、原告としては、久留米市の主張が無意味であることを立証するには、あえて、久留米市の要望を受け入れ、旧耐震基準で設計された建物の強度判定の救済(緩和)措置である耐震診断(三次診断)を行なうしかないと判断したのです。
 本件マンションの耐震性が著しく欠如している実態が立証されれば、それが、裁判審理において、原告、被告の立場や主張を超えた客観的判断を決する最も有力な資料となり得るものであると考え、三次診断による耐震診断を行うことが必要不可欠だと判断するに至りました。

(つづく)

 
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