出光一族から飛び出した創業家への苦言(前)
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12月1日の東京株式市場。出光興産株の終値は、前日比176円(6.8%)高の2,764円に上昇。翌2日には一時2,887円をつけ、年初来高値を更新した。
石油輸出国機構(OPEC)は11月30日にウィーンの本部で総会を開き、8年ぶりに減産することで最終合意した。減産決定で、石油関連株には原油高による業績押し上げ期待から買いが集まった。だが、足元は陥没。10月13日、出光興産(株)と昭和シェル石油(株)は2017年4月に予定していた経営統合を無期限に延期すると発表した。33.92%の出光株を持つ創業家が、合併に反対の姿勢を崩していないためだ。出光興産の経営は出口のない漂流をたどる。
代理人の浜田氏を「出光には関係ない」と一刀両断
創業家の出光昭介名誉会長(89)と、出光興産の月岡隆社長(65)とは会えていない。創業家の代理人・浜田卓二郎氏(75)が会談を拒否しているからだ。
創業家と経営陣の膠着状態が続くなか、沈黙を貫いてきた出光一族から、創業家が昭和シェルとの経営統合に反対していることに苦言が飛び出した。(株)新出光社長の出光泰典氏は『日経ビジネスオンライン』(10月27日付)のインタビューに応じた。その発言が、出光興産の関係者に衝撃を与えた。創業家を痛烈に批判する内容であったからだ。
出光創業家が統合反対を表明したことについて、〈驚きと、出光創業家の矛盾を感じた。出光昭介名誉会長の文章を見ると、昭和シェルは異質で相容れないと書いてあるように読める。しかし、出光の大家族主義からすると、異質なものを含め家族が増えたらふつうは喜ぶものだ。ここに矛盾を感じる。〉
〈さらに言えば、同じ大家族主義の経営陣と話し合いの場を持っていないこともおかしい。大家族主義なら、創業家と経営陣という家族同士でよく話をしないといけないのに、代理人を通してしか話せないという状況に矛盾を感じる〉
破談の可能性にも言及する。
〈これが(出光と昭和シェルとの合併が)破談になったとしたら、社員から創業家に対する尊敬の念は失われる。離反や廃業する出光販売店も出てくるだろう。昭介名誉会長は年齢的にも(89歳)、これからの石油業界に関わる人ではない。(昭介氏の代理人の)浜田(卓二郎)氏に至っては、石油業界や出光がどうなろうが全く関係がない。未来に携わることがない人達が、未来を大きく左右する決定をする。未来を生きていく者にとって、これほど禍根を残す振る舞いはない〉
創業家の出光昭介氏と、その代理人の浜田卓二郎弁護士をバッサリと一刀両断だ。
創業家に異を唱えた出光家の分家
(株)新出光は、福岡市に本社を置く石油販売店の経営会社。九州を中心にサービスステーション(ガソリンスタンド)369カ所を運営。出光興産との取引もあるが、グループで運営するスタンドの大半が昭和シェルのブランドだ。出光興産が上場した際に、一部株式を引き受けた株主でもある。2015年度の売上高は2,131億円をあげる。
新出光は出光弘氏が1926年に創業した。弘氏は出光興産の創業者である出光佐三氏の弟で、出光からのれん分けのかたちで始まった。新出光は弘氏の四男、芳秀氏(現・顧問)が引き継いだ。芳秀氏の妻は、『蒸発』『Wの悲劇』などの推理作家として有名な夏樹静子氏。今年3月に心不全で亡くなった。
泰典氏は、弘氏の二男の豊氏(元新出光会長)の次男だ。1962年10月14日生まれの54歳。九州大学経済学部卒。92年新出光に入社。福岡支店を振り出しに昇進を重ね、03年取締役、08年常務経営企画部長。11年6月23日、新出光の社長に就任した。
(つづく)
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