出光一族から飛び出した創業家への苦言(後)
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合併を破談して、出光興産は単独で生き残れるか
2014年1月、産業競争力強化法が施行された。企業の合併・統合など業界再編を進めることで、国際競争力を取り戻そうという法律だ。この法律は石油業界に初適用された。経済産業省は17年3月末までに各社の原油処理能力を1割減らすことを求めた。
これを受けて、出光興産と昭和シェル石油、JXホールディングス(株)と東燃ゼネラル石油(株)が17年4月の経営統合に向けて動き出した。石油元売り5社は、2グループに収斂する。将来的には、1グループになると見られている。
そういう流れのなかで起きたのが、創業家と経営陣の合併をめぐる対立。出光興産の関係者に波紋を広げた泰典氏の発言は、こう読むことができる。「出光興産が昭和シェルとの合併を破談にして、出光単独で生き残ることができるのか。あくまで経済合理性を基軸に考えてくれ」。これが、泰典氏が創業家の昭介氏に言いたいことのようである。
昭介氏のホンネは息子の正道氏を取締役にせよ
それにしても、なぜ創業家の出光昭介氏と社長の月岡隆氏の関係が、これほどコジレたのか…。
15年12月17日、昭介氏から社長の月岡隆氏宛ての書簡で、創業家から取締役1人を選任することを求めたという。昭介氏には、長男の正和氏と次男の正道氏の2人の息子がいる。長男は出光美術館評議員で、次男が出光興産の社員だ。書簡が、次男の正道氏の取締役就任を意味することは、関係者なら誰でも察知がつく。
「創業家はもう力がない」。そう考えていた月岡社長は、昭介氏の要請を無視。今年5月、新任の取締役候補に正道氏の名前がなかった。5月23日、創業家は月岡社長に合併反対の内容証明を月岡社長に送った。
昭介氏は、眼が黒いうちに息子たちを取締役につけることに執念を燃やした。これがホンネだった。しかし、月岡社長は昭介氏の創業者佐三氏の子孫を絶やしたくないという情念を認識していなかった。和解する絶好のチャンスを逃した。昭介氏も「正道氏の取締役就任で手を打ちましょう」とは、今さら言えない。
出光佐三氏をモデルにした百田尚樹氏の小説『海賊と呼ばれた男』が映画化される。百田氏は、創業家の援軍に馳せ参じた人物だ。国際石油資本に叛旗を翻した佐三氏の気骨を忘れるなと檄を飛ばすわけだ。
代理人の浜田卓二郎氏など応援団がすべてを取り仕切っていることが、事態を混迷に陥れている。経営陣と出光創業家の対立とは、社長の月岡隆氏と代理人の浜田卓二郎氏の対立に他ならない。両者の和解交渉が決裂すれば、昭和シェルとの合併は破談、経営陣は総退陣、株価は大暴落、販売店の大量離反という最悪なシナリオが現実味を帯びてくる。
(了)
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