プーチンを取るか、スーチーを取るか?注目すべき新生ミャンマーの国造り(3)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
これまで60年以上に渡り、国際社会から孤立の道を選び、経済活動は停滞する一方であったミャンマー。東南アジア諸国の中でも最も貧しい国と位置付けられ、平均寿命も最も短い国であった。乳児や子どもの死亡率も高く、国民の3分の1しか電力の恩恵に被ることができていなかった。
道路や港湾といったインフラの整備もままならず、交通事情も極めて貧しいものであった。地震が起きても救援活動すら思うにまかせないという状況が続いた。加えて、土地の所有権が確立しておらず、国民の権利や財産権もあいまいに放置されていた。当然の結果として、社会整備の基盤は立ち遅れたままであった。
このように数えきれない困難を抱えていた国ではあるが、見方を変えれば、今後は飛躍的に成長する可能性があるとも言えるだろう。現在、人口は6,000万人に達し、東南アジア諸国の中でも急成長が目立つ。しかも、若年層が多く、勤勉で安価な労働力の源としても世界の注目を集めている。海外からの企業進出も目立つ。
地政学的にも、中国とインドという超大国に挟まれており、今後はアジアにおける貿易や通商面におけるハブ機能を果たすことも期待されている。歴史をひも解けば、ビルマ時代は東南アジアにおいて、最も豊かで先進的な文化を育んできた国であった。イギリスの植民地として、この地域の貿易や経済活動の中心地でもあった国。スーチーさんの亡くなった夫もイギリス人であった。
ミャンマーは天然資源が豊富で、石油や天然ガスに加え、様々な希少金属の埋蔵も確認されている。森林資源や農産物も豊かである。小生はかつて世界最大の翡翠(ひすい)の原石が眠るミャンマーの採掘場を訪ねた。ミャンマーにとって翡翠は最大の外貨獲得の道に他ならない。何しろ輸出額の半分近くを稼いでいる天然資源だ。国軍の兵士が厳重に警備している姿が印象的だった。
2016年10月には、アメリカによる経済制裁も全て解除された。その結果、欧米諸国の金融機関がこぞってミャンマーへの進出を図るようになってきた。当然のことながら、スーチー政権の下ではこうした国際金融機関の期待に応えるべく、国内の経済改革を加速させ、海外からの投資や技術移転を可能にする国内法の整備に余念がない。経済特区も次々と選定され、海外企業の受入れに熱心な姿勢を示している。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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