二重の制度ミスが招く再エネ100%への遠い道(2)
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認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長 飯田 哲也 氏問題解決には、<再エネ賦課金>と<環境価値>を分けて、<回避可能原価>を加えた“3階建て”にすれば良いのです。たとえば10kW以上の太陽光発電の場合、現在のFIT価格24円/kWhのうち<環境価値>を、仮に最低限の1円/kWhで電力会社の負担で引き取ることをデフォルトとします。そこに、別の大型オフィスビルのオーナーが「東京都の環境規制に合致させるために、当社は1.5円/kWhで買ってもいい」と手を挙げた場合、太陽光発電会社はそちらに売ることができるようになります。それだけで「再エネ付加価値=CO2排出削減価値」の市場ができますし、従来からのグリーン電力証書も矛盾なく使えます。
もし、<環境価値>の引き取り手が誰もいなければ、東電などの電力会社が自分で引き取ることで、今までわざわざ海外から購入していたCDMの代わりにできます。そうすれば、非化石など新市場をつくる必要はなく、「再エネ付加価値」も非常にきれいに整理できるのです。
日本では、今や純粋な「再エネ付加価値」は自家発電の再エネ分しかなく、縮小する一方です。政府が最初の制度設計の間違いのうえに、「非化石価値取引市場」という間違いを再び重ねようとしています。こんなものを通用させたら世界の笑いものです。
グーグルやフェイスブックなど、多くのグローバル企業は「自然エネルギー100%」を実現しようとしています。ある日本法人の担当者と話したとき、「再エネ100%は中国でもできるのに、日本ではできないんですよ。何とかなりませんか」と問われました。それほど日本の制度は歪んでいます。
その象徴が今回の「非化石価値取引市場」で、最初の一歩を間違えたうえに、再び間違えた市場をつくろうとしているのです。
(つづく)
【大根田 康介】(※)クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)の略。先進国が開発途上国において技術・資金等の支援を行い、温室効果ガス排出量の削減または吸収量を増加する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を支援元の国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度。
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