二重の制度ミスが招く再エネ100%への遠い道(3)
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認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長 飯田 哲也 氏誰の負担かは後責任の順位が先
――原発の廃炉費用は一時期、新電力会社の利用者も負担するかどうか議論されました。16年11月、送配電ネットワークの使用料にあたる託送料金に上乗せする案が示され、フタを開けてみれば結局負担が求められる制度が進められています。
飯田 廃炉費用の負担の話は、そもそも「誰が負担するか」だけの議論では向こうの土俵に乗ってしまいます。福島第一原発の話では本来、損害賠償の費用、除染の費用、廃炉の費用は分けて考えるべきです。
しかも「廃炉」は本来、“事故を起こしていない原発を老朽化などで解体する”ことを指します。しかし、福島原発は事故を起こして煙がまだくすぶっているわけですから、「廃炉」ではなく「事故処理」の段階なのです。
それをなぜ、わざわざ「廃炉」と表現するのか。「廃炉」と呼ぶことで電気事業法の定める事業行為となり、電気料金の原価に事故処理費用を織り込めるからです。福島原発に限れば、「廃炉」とは悪質な呼び方です。本来、処理費用は東電が自己負担すべきですが、今は関東地方の東電エリアの電気料金に転嫁されています。そこにはガレキやデブリの処分費用も含まれ、費用は21.5兆円と経産省は試算していますが、デブリの位置すら不明な状況を考えると、30兆円、50兆円と跳ね上がるでしょう。
負担の議論については、「誰が」ではなく、負担すべき人が先に負担し、責任を取るべき人が責任を取るという、「責任の順位」をすっ飛ばして議論していることが問題なのです。事故を起こした東電の経営者はもちろん、規制の虜だった旧原子力安全・保安院および旧内閣府原子力安全委員会などの関係者を公職に二度と携わらせないというけじめをつけ、東電を破産させて国有化し、株式価値をゼロにして株主にも責任を負わせるべきです。東電に貸しこんだメガバンクも債権放棄すべきでしょう。
そのうえで、事故収束と電力の安定供給ができる体制を整えて、東電の資産、たとえば送電系統を国に売却して売却益で処理費用を補てんすれば、国にも送電益が入ってきます。東電の発電所は喜んで買う大手企業もたくさんあるでしょう。それで出すものを出し切ったうえで、まだ処理費用が足りないとなれば、国民負担はそこからの話です。
入り口で責任論が欠けているので、責任を取るべき人はろくに取らず、いまだに東電でも経産省でもほくそ笑んでいますよ。
(つづく)
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