二重の制度ミスが招く再エネ100%への遠い道(4)
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認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長 飯田 哲也 氏新潟はこれから鹿児島は絶望的
――16年7月の鹿児島県知事選、同年10月の新潟県知事選など、各地で脱原発を掲げた候補が県知事になっています。この動きをどう見ますか。
飯田 新潟県は「さあ、これから」という感じです。同年7月の参議院議員選挙とその後の新潟県知事選がほぼ同じ構図でした。市民連合と野党連合が非常に良いバランスで組み、まず森裕子参議院議員が参院選で当選。その後、県知事選では森さんも一緒になり、米山隆一さんを同じ連合で勝たせました。
新潟県の場合、柏崎刈羽原子力発電所が07年の中越沖地震で被災した際、東電は対応のまずさもあり地元ではすごく不評です。他の地域では、たとえば関西電力は福井県を、九州電力は佐賀県や鹿児島県を抑え切った状況ですが、それとは違い、東電は事故を起こした当事者でありながら、中越沖地震により変圧施設で火災が発生したにもかかわらず、我先に逃げ出す無能さをさらけ出しました。
もちろん、新潟県にも原発推進派はいますが、総じてすごく開明的、自立的な面が県民にはあります。しかも、県知事選で米山さんの対立候補の森民夫さんが選挙演説で、「自分は安倍晋三首相と携帯で話せる間柄だ」と、県民の意識を逆なでするようなことを言っていました。国と直結したパイプで新潟県を運営するという上から目線の発言で、つまり安倍政権の言いなりになることも意味していたと思います。
新潟県には福島県からの避難者がまだ3,300人ほど(16年10月31日時点)いますし、原発事故で福島と同じような状況になるのではないかと、かなりリアリティのある見方を持っています。改めて新潟における原発再稼働が真正面から捉えられた選挙でした。
一方の鹿児島県は、たしかに原発再稼働も大きなテーマでしたが、伊藤祐一郎前知事に対して保守派が割れたという要因もあります。保守派の片方が脱原発を訴える野党連合と組み、三反園訓さんに相乗りして逆転当選できましたが、その後16年11月の川内原発の視察では、三反園県知事はゴリゴリの推進派を連れて行きました。
そういう意味で、鹿児島では脱原発は風前の灯というか絶望的ですね。完全に再稼働に突っ走っています。ポーズか単なる準備不足かわかりませんが、同年8月にも徒手空拳で九電に原発停止を申し入れていましたし。
派手な劇場型の政治を演じると、役所からの反動が大きいので、地味だけど丁寧な仕事をしなければいけません。役所内にも獅子身中の虫はたくさんいますし、知事が1人で立ち向かってもあっという間に籠絡されるでしょう。米山新潟県知事が地道にどれだけ自分のペースを握れるかですね。中央はもう少し根深いというか怖い組織で、霞が関は自分たちがこの国を統治していると思っています。この国が本当の民主主義になるには、まだまだ時間がかかりそうです。
(了)
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