「文春砲」も販売面では不発の週刊誌マーケット(前)
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あの「文春砲」も販売面では不発だった――。日本ABC協会がこのほどまとめた2016年1月~6月の平均雑誌販売部数調査によると、スクープを連発してきた週刊文春でさえ、販売部数の増加は前年同期比1万9,000部余と、ごくわずか。文春の宿敵の週刊新潮は同じ期間に4万3,000部も減らしており退潮著しい。10万部を割り込む週刊誌も続出し、このままでは「週刊誌」というビジネスモデル自体が崩壊しそうだ。
週刊文春は、新谷学編集長の謹慎が解けて1月に職場復帰後、スクープを連発するようになったのは周知のとおり。タレントのベッキーのゲス不倫騒動、甘利大臣の金銭スキャンダル、SMAPの独立・解散騒動、神戸連続殺傷事件の少年Aを直撃するなど、「文春砲」という造語ができるほど耳目をひく特ダネを連打し、お茶の間に広く話題を提供した。読売新聞、産経新聞、NHKが露骨に安倍政権にすり寄って政府広報機関と化し、朝日新聞が14年の従軍慰安婦の訂正報道と「吉田調書」問題によって凋落するなか、ひとり大手メディアで気を吐いたのは文春だった。新谷氏やスクープ記者の中村竜太郎氏ら文春の編集者・記者は一躍有名人になり、「文春の次のスクープは何か」と、たえずその動向が注目を集めてきた。
しかし、衝撃的なのは、これだけのスクープを連発しているにもかかわらず、販売部数は前年同期比でわずか1万9,000部増の43万部余にすぎないことだ。一昔前ならばもっと如実に販売部数増に現れ、雑誌には珍しく増刷、あるいは刷り部数を増やすということもありえただろうが、これだけ連打しまくっても2万部弱の増加にすぎない。「以前だったら考えられないことですが、まったく深刻ですよ。全然、販売に結びつかないのです」と文春編集者は言う。十数年前までだったら十万部の部数増が見込めたはずだが、そうなっていないのだ。
文春がスクープを放っても、あっという間にインターネット上で概要が拡散し、読者はキュレーションサイトで無料の要約記事で概要を知ることができる。そして後追いするテレビの情報番組の内容で満足し、実際に文春を買って読もうという行動にさほど結び付かないのだ。
意外なのは、同じ期間に週刊現代と週刊ポストがさしたるスクープがないにもかかわらず、それぞれ2万部増の32万部、27万部だったことだ。現代とポストは労の多いスクープ路線を捨て、医療記事やセックスなど中高年サラリーマン向けの「読み物」に特化した路線に転換して奏功したといえる。文春は訴訟リスクなど労多くして、益は意外に少なしといえるだろう。
(つづく)
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