2024年11月25日( 月 )

巨額投資が相次いでいる有機EL市場(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 それでは現在、OLED(有機EL)市場の状況はどのようになっているだろうか。

sumaho まず、中小型の有機ELディスプレイは、スマートフォン(スマホ)との相性は良いようだ。
 世界でいち早くスマホに有機ELディスプレイを採用したのは、サムスン電子である。その結果、サムスン電子の有機ELディスプレイの生産会社であるサムスンディスプレイは、中小型有機ELディスプレイの世界シェア90%以上を占めている。有機ELディスプレイを世界で最初に商品化したのは日本企業だが、量産化の壁を乗り越えて市場をリードしてきたのは、サムスンディスプレイである。
 有機ELディスプレイは、1年前まではコストも液晶ディスプレイ(LCD)に比べて15~17%くらい高かったが、大量生産することによって、コストも液晶ディスプレイとほぼ同じ程度か、少し安くなっている。

 2015年には、有機ELディスプレイを採用したスマホは全体の13%(2億台)を占めていたが、18年度には、有機ELディスプレイはスマホ全体の50%以上を占めることが予想されている。
 有機ELディスプレイはサムスンだけでなく、グーグル、シャオミもプレミアム製品に採用をしている。さらにアップルもiPhone8に有機ELディスプレイを採用することを正式に発表し、その発表を受けて、生産メーカーを中心に巨額の投資計画が相次いで決定されている。
 サムスンの国内ライバルであるLGディスプレイは、どちらかというと中小型ディスプレイよりも大型ディスプレイに力を入れていた。しかし、アップルからiPhoneの受注が確定し、中小型にも参入する予定である。

 中小型有機ELディスプレイでとくに注目を浴びているのは、中国企業の動向である。

 近年、中国企業は液晶ディスプレイに巨額の投資を実行し、韓国企業を追い上げようとしてきた。液晶ディスプレイで市場を中国企業に侵食されるようになったサムスンとLGは、その対策として有機ELディスプレイで中国との差別を計ろうとしている。
 ところが、中国は政府の手厚い支援の下に、有機EL分野にもまた莫大な投資を計画している。中国最大手のBOEは、19年の生産稼動をメドに8,000億円の投資を決定しているし、エバーディスプレイも4,600億円の投資を予定している。
 中国だけでなく日本も、今後、爆発的な成長が予想されている有機EL市場に、手をこまねいているわけではない。ジャパンディスプレイは(株)JOLEDを120億円で買収し、市場への攻勢をかけようとしている。

 ところが、業界の専門家によると、有機EL技術は液晶ディスプレイ技術に比べ5~6倍は難易度が高く、韓国企業は中国企業に簡単にキャッチアップされることはないだろうと指摘した。また日本企業の場合には、スケールメリットの面で韓国企業の大きな脅威にはならないと付け加えた。

 有機ELディスプレイは、市場で需要によって価格優位性を証明したこと以外にも、反応速度もTFT-LCDに比べ、1,000倍も早くて残像が残らないというメリットもあるとのことだ。そのほかにも、有機ELディスプレイは高輝度、高コントラストなど、液晶ディスプレイより長所が多く、スマホへの本格的な採用が進みそうだ。
 サムスンディスプレイは今までのシェアを守るため、最も積極的な投資を敢行。サムスンは早期に月産4万5,000枚の生産体制を構築しようとしている。

 有機ELディスプレイのもう1つの大きなマーケットは、テレビ市場である。テレビの場合、これまでは有機ELディスプレイは高価だったので、あまり需要がなかった。有機ELテレビに積極的だったのはLG電子くらいであった。しかし、テレビの方でもプレミアム商品を中心に有機ELディスプレイの需要が伸びており、ソニー、パナソニックをはじめ、中国のBOE、TCLなども有機ELテレビ市場への参入を図っている。
 そのためLG電子は、自社の今までのシェアを守るため、波洲(パジュ)に世界最大工場の建設を計画し、有機EL生産体制構築に10兆ウォンの投資を決定している。

 有機EL分野の市場調査会社であるHISによると、有機ELディスプレイ市場規模は14年に87億ドルであったが、22年には291億ドルに成長すると予測している。

 韓国経済が苦戦しているなかで、有機ELディスプレイ市場の需要増加は、韓国経済にとっては渡りに船である。有機ELの特徴を考慮した場合、市場は今後、大きなポテンシャルを秘めている。とくにフレキシブルなディスプレイの登場は、市場を劇的に成長させるかもしれない。韓国の2社の健闘は韓国経済に大きな励みになっている。とはいえ、液晶ディスプレイも改善を重ねているので、今後どちらが本命になるのか、市場の動向から目が離せない。

(了)

 
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