2024年12月23日( 月 )

カトープレジャーグループ・30年無敗の事業経営者が語る地域再生のカギ(4)

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カトープレジャーグループ 代表取締役 兼 CEO 加藤 友康 氏

 九州では、2002年に破綻した公共リゾートを「長崎温泉 やすらぎ伊王島」として再生し、地域の雇用創出、経済の活性化に貢献するほか、インバウンドの富裕層にも好評を博す高級旅館やリゾート施設、意趣を凝らしたレストランなど、幅広く事業を手がけるカトープレジャーグループ。すべての事業で共通しているのは、事業収益まで責任を持つ「トータルプロデュース」の姿勢である。同グループ代表の加藤友康氏に、事業を通じた地域再生をテーマとして話をうかがった。


日本の課題として地域活性化に取り組む

 ――地域再生プロジェクトは、加藤代表のなかでどのような位置づけをされていますか。

唐津 網元の宿 汐湯凪の音

唐津 網元の宿 汐湯凪の音

 加藤 これからの日本の大きなテーマだと思っています。一極集中の経済によって都市が繁栄し、地方が疲弊していくことは大きな問題であり、地域活性化のなかで観光は大きなポイントです。観光においては、それぞれの地域が、オリジナリティを発揮して、インバウンドのお客さまに向けても発信をどうしていくか、私たちのような事業者が、地域と密着していけるかが大きなテーマだと思います。

 インバウンドのお客さまへの一番の問題はプロモーション力だと思っております。SNSで広まる場合もありますが、外国の方からは言語や習慣の問題でなかなかわかりにくいとお聞きします。個人旅行でローカルエリアを楽しめる情報がないということがありますので、そういった点も改善していくべきだと思います。

 もう1つは、富裕層の方を取り入れるマーケットが確立できていないことが地域、地方都市の大きな問題だと思っています。今とくに、富裕層に向けてのビジネスとして高級旅館を箱根と熱海で運営していますが、日本で最もADR(Average Daily Rate、平均客室単価)が高く、一泊10万円以上いただいています。外国の超富裕層の方にもお越しいただいておりますが、とくに宿泊の場所が、そうした方に見合うものが地方にはなかなかありません。超富裕層の方に来ていただけると、より地域経済にお金が流れていくと思います。また、そういう方々が楽に移動できる時間軸と環境を整備することは、「観光立国」を掲げる日本にとって、大切な要素になると感じています。

 ――加藤代表の著作「世界一楽しい仕事をしよう!」(ワニブックス)は、他業種にとっても勉強になる内容です。接客姿勢が厳しく問われる業種ということもあるでしょうが、かなり力を入れられていることとお察しいたします。

 加藤 「日本の全産業はサービス業化すべき」と私は言っておりますが、必ずホスピタリティの心を持ってモノを売ったり、サービスをしなければならないと思います。私たちもまだまだ至らない部分があると思いますが、この仕事でやはり大切なのは「人」です。1人ひとりのメンバーが何を思って働いているか、また、チームとして理念を持ち、複数の力で増大していけるかという部分だと思います。

 リクルートの部分では、同じ心を持ったメンバーを集める「リクルーティング」、次に人財育成する「エデュケーション」、3番目に雇用の「システム」をどうするかという、ポイントが大きく3つありますが、何より心を通うチームであることが一番大切だと思います。よく私は「心の価値観」と言いますが、目指すところや心根が違う人が働くと、上手くいきません。私には、会社の理念なり、私の思想哲学を仲間にしっかりと伝えていく責任があると思います。それを理解して行動に移す仲間と働けることが、会社にとってもスタッフにとっても一番の幸せだと思います。

(了)
【聞き手・文:山下 康太】

<プロフィール>
katou_pr加藤 友康
1965年、大阪府出身。ホテル、フードサービス、スパ、ラグジュアリーリゾート、公共リゾート、エンターテインメントなどあらゆるレジャー事業の総合的な開発を行うプロデュース企業、カトープレジャーグループの代表取締役兼CEOを務める。22歳のときに父親の急逝により事業を引き継ぎ、代表取締役に就任。現在、日本全国に事業所を展開し、総スタッフ数約3,500名、年間500万人におよぶ顧客を動員している。代表的な事業として「箱根・翠松園」「Kafuu Resort Fuchaku CONDO・HOTEL」「麺匠の心つくし つるとんたん」などがある。主な著書に、「経営者が欲しい、本当の人材」「世界一楽しい仕事をしよう!KPG METHOD」(ワニブックス)がある。

 
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