2024年11月29日( 金 )

設計者(木村建築研究所)による構造計算の偽装、不適切な設計~久留米・欠陥マンション裁判レポート(2)

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福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」の構造・施工の欠陥をめぐり裁判が続いている。前回は、この欠陥マンションの建築確認を交付した久留米市について記述した。今回は、設計を担当した木村建築研究所による構造計算の偽装、不適切な設計について、記述する。

 「新生マンション花畑西」の設計は、(株)木村建築研究所(本社:福岡市南区、以下、木村建築)と(株)U&A設計事務所による共同設計である。このうちU&A設計はすでに事務所もなく、所在不明となっている。木村建築は法人として存続しているが、一級建築士事務所は廃業している。

 設計の瑕疵の大半が、構造計算の偽装によるものであるが、木村建築は設計だけでなく、建築確認申請上、工事監理者でもある。このマンションにおいては、鹿島建設による施工の不具合が数多く判明しているが、工事監理が不十分だったことが施工の不具合の原因の1つであることは間違いない。

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2.木村建築研究所の設計上の瑕疵

(1)地盤種別の偽装(建設省告示昭55建告第1793号違反)
 構造計算書の構造計算概要書の部分には地盤種別を「第2種地盤」(第2種地盤とは軟弱な地盤)と記載されているが、構造計算自体は「第1種地盤」(堅固な地盤)として計算され、本来の地震力(地震により建物を揺らす力)よりも相当過小な地震力として計算されたため、構造部材全般にわたり耐力不足の状態となっている。

(2)異種基礎併用の禁止違反(建築基準法施行令第38条の2違反)
 建物反対の基礎は杭基礎であるが、エントランス部分の基礎は直接基礎であり、違法である。

(3)1階の柱脚がピン柱脚である場合、保有水平耐力計算における構造特性係数(Ds値)は鉄筋コンクリート造のDs値を採用しなければならないが、このマンションの構造計算においては、鉄骨鉄筋コンクリート造の場合の低減値を採用しているため、保有水平耐力計算が偽装され、本来の計算結果(保有水平耐力比=耐震強度)よりも大きな(耐震強度が高い)結果となるよう計算されている。Ds値が偽装されなければ、耐震強度は相当低くなる。

(4)1階の柱脚がピン柱脚である場合、柱脚の鉄量は、柱頭の鉄量と同等以上必要とされているが、このマンションでは48%と半分以下の鉄量となっている。

(5)柱と梁の接合が不十分。コンクリート部分が15cmしか接しておらず、内部の鉄骨については、16.25cmも離れており全く接合されていない。

(6)柱の帯筋の間隔が施行令に違反。

 偽装などの不適切な構造計算により設計されたこのマンションを構造検証したところ、耐震強度は35%ということが判明したが、木村建築は、「設計をしていない」と主張していた。しかし、建築確認関係書類、マンション販売用パンフレットなどに木村建築が設計者として記載されているという客観的な事実から、木村建築がマンションの設計に関わっていたことは間違いないのである。

3.木村建築の工事監理上の瑕疵

 工事監理は、設計と同じく建築士が行うべき業務であり、このマンションの確認申請書にも、建築主と鹿島建設との工事請負契約書にも、工事監理者として木村建築の名前が記名押印されている。法的にも客観的にも、木村建築が工事監理者であることは明らかである。しかし、木村建築は、「勝手に名前を使われた」、「社員が勝手に実印を持ち出して書類に押印した」、「工事契約書に記名押印があるが工事監理を行っていない」などと、工事監理への関与を否定している。

4.木村建築代表者への証人尋問

 平成28(2016)年10月6日、木村建築の代表者である木村忠徳に対して行われた証人尋問において、木村忠徳氏は、下記のような証言を行った。

「事業者である新生住宅の永野社長からU&Aの設計を手伝って欲しいと依頼された」
「工事監理までトータルに請けたのはU&A設計」
「確認申請書にある木村建築の記名押印は、記憶にない」
「竣工届、工事請負契約書の木村建築の記名押印も記憶にない」
「社員Kが現場に行き、配筋検査などを行い、鉄筋のかぶり厚さ不足を是正させた」
「社員Sがタッチしていたのは設計段階で、Sは現場監理にはあまり行っていない」
「監理は社員が社長である自分に無断で行った。監理の報酬は貰っていない」
「マンション販売用パンフレットに木村建築の名前があることは、裁判が始まって 初めて知った」
「確認申請書に、勝手に木村建築の記名押印をしたのはU&Aだと思う」

 これまでの「設計も監理もしていない」という主張に対し、「設計を手伝った」、「社員が現場に監理に行った」との証言は矛盾している。社員が、社長に無断で、無償で監理に行くことは背任行為であり、常識的に考えられない。会社の実印を社員が勝手に持ち出すことも考えられず、木村忠徳氏の証言は、木村建築の管理建築士であった自身の責任を回避するために、嘘を並べたものとしか思えない。

 一級建築士という資格は、建築士法に基づく国家資格であり、一級建築士は、建築関係法規に適合した安全な建物を設計および工事監理する義務を負っている。木村は、一級建築士の義務に反した設計と工事監理を行い、これは、建築士としてあるまじき行為である。建築士法による行政処分と別に考えても、民事としては、このマンションの区分所有者に与えた損害を賠償すべきであり、耐震強度が35%の本件マンションにおける賠償としては、建て替える以外に方法はないのである。

【伊藤 鉄三郎】

 
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