2024年12月23日( 月 )

疑惑の業者選定 紹介したのは福岡在住のまちづくり専門家

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 徳島県神山町の公共事業の委託先に、福岡の幽霊会社「カーディナリス有限会社」が選ばれようとしていた問題で、町幹部に同社を紹介したのは福岡在住の公社理事だった。

 公社とは2016年4月に官民で発足させた「一般社団法人神山つなぐ公社」(徳島県神山町)。町の考えるまちづくりを推進するのが目的で、公社理事は4名で構成されている。その中で、福岡にゆかりのある人物は、たった一人。福岡在住で、リージョンワークス合同会社(福岡市中央区)の後藤太一代表である。

リージョンワークスHPより リージョンワークスHPより

 徳島県神山町の公共事業に、なぜ福岡の幽霊会社が選ばれようとしていたのか。

 きっかけは後藤氏の紹介以外に考えられない。

 地方再生、まちづくりを通じて、福岡でも後藤氏を知る人は多い。なぜなら、後藤氏が福岡天神のまちづくり活動を推進する「一般社団法人We Love天神」に、理事として加わっているからである。過去には、西日本新聞社経済電子版にコラムを執筆しており、添付の経歴を見ても一目瞭然。影響力のある人物である。町幹部が信用しきっていた背景がここにある。

 疑惑の業者選定を報じた地元紙の取材に対し、後藤氏は「(町幹部に)経営コンサルを紹介してほしいと言われたので、複数社『例示』しただけ。カーディナリスの状況は知らない」と答えている。「例示」と言葉を言い換えているが、紹介したことに他ならない。状況を知らない業者を紹介すること自体、不可解である。

yakuba データ・マックスの取材に対し、後藤氏は「神山町の経営診断事業に関しては、町役場に一任している。コメントできない」としている。「町役場に一任」という、意味不明なコメントで、一切の質問に答えようとしなかった。

 カーディナリスの井上代表と後藤氏の接点を探るべく、調査を進めた。後藤氏は前職で合同会社「福岡アーバンラボラトリー」(福岡市中央区)を設立、2014年4月まで在籍していた。この会社の登記簿上の現住所は福岡市中央区薬院であるが、実質住所は井上代表の設立した別会社「バカロレア」と同じであることがわかった。つまり、この二人は無関係ではない。そもそも無関係な会社を公共事業の委託先として紹介するはずはない。「カーディナリスの状況は知らない」という発言も、信用できるものではない。登記上存在せず、実績もない会社を紹介するのには、何か特別な理由があったと考えるのが普通だろう。

 町幹部へ幽霊会社を紹介したのは、後藤氏で間違いない。福岡に縁がない他の理事が福岡の業者を紹介するわけはないからだ。後藤氏が幽霊会社を紹介した明確な理由は分かっていないが、問題の発端は後藤氏の紹介から始まっている。後藤氏は「まちづくりの専門家」として、複数の組織の特別職を担っていることも踏まえ、今回、問題を招いた責任は大きい。「専門家からの紹介だから」と、幽霊会社の照会を省いた町幹部の責任も重大だが、後藤氏は説明責任を果たすべきだろう。

 今回、地元紙の報道により、「幽霊会社」の存在が明らかになり、今月中旬に同公共事業の業務委託先から外されたことがわかった。当然のことである。町幹部は、調査不足を認めているが、この業者を紹介した後藤氏からは何の説明も聞かされていないという。

 後藤氏の責任問題が浮上しない背景には、町幹部が地域活性化を外部に依存している現状が見えてきた。

【東城 洋平】

▼関連リンク
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