2024年11月22日( 金 )

エストラストが西部ガスの傘下に~その真相に迫る(3)

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denkyu エストラストは九州・山口を地盤とするマンション販売会社であり、オール電化マンションの「オーヴィジョン」シリーズを展開している。しかし今回のTOB(公開買付け)により西部ガスが、51%以上の株式を取得し子会社となると、今後はガス主体の「オーヴジョン」シリーズに切り替えていくというのだ。エストラストの買収は、今年4月のガス全面自由化で家庭向けに参入する九州電力との競争が激しくなることを見越して先手を打ったということなのだろう。

 オール電化マンションを売り物にしていたエストラストが、一転してガス販売と不動産で相乗効果を高める路線に転換したことになるのだ。確かにガス器具の安全性は高くなってきているが、今まで販売してきた「オーヴィジョン」のコンセプトは一瞬に失われることを意味するとともに、背信行為ともいえる方針転換ではないだろうか。エストラストは今まで掲げていた崇高な『ヴィジョン』を捨てて、利害に走ったということになろう。

 さて、これから両社の財務内容を比較検討していく。【別表1】【別表2】を見ていただきたい。

この表から見えるもの

◆西部ガスの売上高を見ると、17年3月期の予想は1,700億円(前期比▲203億円/減少率▲10.7%)。15年3月期と比較すると▲386億円(減少率は▲18.5%)と、大きく落ち込んでいるのが分かる。
・収益については16年3月期は大幅に改善したものの、17年3月期は昨年4月に発生した熊本地震の影響もあり、営業利益、経常利益は10%台のマイナス予想となっている。当期利益は40億円(前期比+17億5,800万円)を予想しているが、最近原料のナフサの価格が高騰してきており、その動向次第といえそうだ。

◆一方買収されることになったエストラトの17年2月期の売上高予想は、130億円(前期比+1億7,300万円)の微増となっているが、営業利益、経常利益、当期利益はすべて前期比マイナスとなっており、収益に厳しさが見える。

・参考までに両社の貸借対照表及びエストラストの経営指標【表3】を掲載しているが、とくにエストラストの財務内容が悪化しているのが分かる。

◆人口の減少に伴う経済規模が縮小するなかで、電力の自由化とともにガスの自由化が本格的になっていく。ガス事業者は地域のプロパンガス販売企業との競争に加え、今年4月から新たな市場を求めて異業種が新規参入し競争が激化する時代に突入する。これまで比較的安泰だった西部ガスの経営はここ数年で大きく揺らいできているのがわかる。このままでは生き残れないとの危機感が、エストラストの買収を決断した大きな要因ではないだろうか。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

【表1】

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【表2】

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【表3】

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※クリックで拡大

 
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