トランプ氏の北方領土カジノ構想 日米ロ3カ国のベンチャービジネスとなるか(3)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
昨年5月、トランプ氏が大統領選挙を戦っていた時期、参議院の外交防衛委員会において私が岸田外相に質問した事があります。「米大統領選挙でトランプ氏が勝利するかもしれないが、彼は前々より北方領土にカジノを開発するプランを持っていた。もし彼が大統領に当選し、ロシアにこのプランを提唱すれば日本政府はどう対応するのか?」と聞きました。岸田外相の反応は「仮定の話には一切お答えできません」でした。この場面の映像がテレビ番組で繰り返し流され、話題となったものです。実は、同じ質問を安倍総理にもしたのですが、真摯な回答はありませんでした。
では何故北方四島の中で、国後島なのか。面積の規模、発展の状況からすれば択捉島の方がふさわしいかも知れませんが、実はトランプ氏にとって、国後島は思い入れのある島なのです。トランプ氏が良く使っていたフレーズに「Make America great again(米国を復活させる)」「America First(米国第一)」がありますが、これを最初に提唱したのはチャールズ・リンドバーグ氏でした。
彼は大西洋単独横断飛行を成功させ、世界的にも有名な飛行家ですが、1931(昭和6)年に北太平洋航路調査のため、夫妻でカナダ、アラスカ経由で来日した事があります。この時は彼が操縦桿を握り、飛行機で北海道・根室に向かっていましたが、国後島沖で濃霧に遭い不時着してしまいます。幸い夫妻は国後島の漁民に救助されました。この後、リンドバーグの記念碑が国後島に建立されています。
その後、リンドバーグ氏は大統領選挙で、候補者の一人として注目されます。当時、国際情勢はナチス・ドイツの台頭で揺れていました。米国が国際協調主義を貫くか、それとも孤立主義に戻るのか。リンドバーグ氏は後者の立場であり、米経済界の大物、ヘンリー・フォード氏からも支援を受けていました。選挙中、リンドバーグ氏が唱えていたフレーズが「America First」でした。その意味では、リンドバーグ氏はトランプ氏の大先輩に当たると言えそうです。こうした歴史的経緯があり、大先輩の恩人である国後島の住民の為に、「リゾート施設を建設したい」とトランプ氏は提唱したのかもしれません。
さて、カジノと言えば「非合法」的なものと扱われます。犯罪組織、依存症といった問題があると言われ、敬遠されていましたが、昨年末、日本でも国会で「カジノ法案」が成立しました。実際、アジアを見渡せば、カジノだらけです。老舗と言われるマカオを始め、韓国、シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピン等々、各地でIRが建てられています。日本では2020年の東京五輪を前に、外国人観光客の大量誘致が見込まれています。そこにカジノを活用しようと言うのですが、私に言わせれば「二周遅れ」ですね。
ただ、北方領土の共同開発、ひいては日露関係の強化と言う意味で大きな可能性があるのが、「国後島カジノ」かもしれません。ロシアのカジノ業界ともパイプがあるトランプ氏が一枚絡めば成功の可能性も高まるでしょう。昨年11月の安倍総理とトランプ氏の会見時にも、この計画の話が出た、とも言われます。課題はあるでしょうが、日ロ米3カ国のベンチャービジネスが立ち上がれば、日ロ関係にとっても、1つの「突破口」になるはずです。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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