エストラストが西部ガスの傘下に~その真相に迫る(4)
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1月23日、西部ガスはエストラストを買収すると発表。双方のトップが記者会見に応じてそのメリットを語っている(いずれも日経新聞電子版を要約)。
◆酒見俊夫西部ガス社長の発言要旨
・昨夏に金融機関から提案があり、11月から本格検討してきた。
・ガスの全面自由化を前に昨秋策定した初のグループ中期経営計画では、まず3年間でガス事業以外を2割から3割に伸ばす目標を立てた。
・エストラストの2016年2月期の売上高は128億円。子会社化でガス以外の比率を25%程度に引き上げられ、目標達成に大きく近づく。不動産事業とガス事業の双方を強化できる相乗効果も大きい。
・3年間でガス以外に100億円の投資枠を確保しており、「総合エネルギーサービス企業」に飛躍できる年にしたい。◆笹原友也エストラスト社長の発言要旨
・九州の不動産グループとしてJR九州や西鉄に対抗できる規模になる。
・少子化でマーケットは厳しさを増す。量を維持できない危機感があったので、成長市場である福岡市に早く基盤を築きたかった。
・両社のシナジー効果については「西部ガスの持つ福岡の遊休地や事業用地の情報と当社の営業力で大規模案件にも参入できる。知名度や信用力強化で資金や人材の調達が容易になる。
・現在の年間500戸程度の供給能力を早期に1,000戸とし、売上高300億円まで持っていく。記者会見で笹原社長は、『JR九州や西鉄に対抗できる』と豪語したというが、果たしてそうなのだろうか。別表を見ていただきたい。
この表から見えるもの
西部ガスの17年3月期の予想売上高は1,700億円に対し、エストラストは130億円。一方直接競合する九州電力の予想売上高(以下いずれも17年3月期)は1兆8,100億円。笹原社長が競合できるとしたJR九州の予想売上高は3,788億円であり、西鉄は3,560億円である。
期は違うが西部ガスとエストラストを単純合算しても1,830億円で、JR九州の半分以下しかないのだ。東証一部上場の社長である笹原友也氏ではあるが、「JR九州や西鉄に対抗できる」とした根拠は、数字を見る限りあまりにも浅薄な発言ではなかっただろうか。
下関のある消息筋は「笹原社長は原弘産の原将昭社長(当時)の親戚であることから入社。中卒ながら営業成績は良かったという。その後独立してエストラストを立ち上げた苦労人でもある。しかし最近は高騰する建設費や他社との競合で経営は厳しくなっていたと聞く。ガスの自由化でやはり苦しんでいる西部ガスに高い値を付けて身売りしたのではないかとの噂が流れている。笹原社長は個人が保有する株式の売却で総額13億5,100万円を手にするが、下関では『会社を売った』と評判になっており、まともに表通りは歩けないのでは」と語った。
はたして西部ガスにとっても良い買い物だったのだろうか。両社のコラボレートが吉と出るのか。それとも凶と出るのか。ここ2~3年は目が離せない状況が続くことになりそうだ。(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】※クリックで拡大
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