【倒産を追う】ロビンス物語「許可業の落とし穴編」(後)
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活性化する不動産市場を背景に、東京・大阪へ支店を開設し、不動産担保融資のリファイナンスで業績を伸ばした(株)ロビンス。順風満帆かに見えた事業展開は、2008年9月からのリーマン・ショックによる世界的な経済の冷え込みと、経営者一族が抱えていた火種が爆発することによって大きく狂うことになった。
経営者一族の検挙歴で貸金業登録の更新不可
「もう事業を続けることができなくなった」。福岡支店の忘年会の後、専務(経営者一族・代表の長男)はX氏をひとり呼び出し、静かな声で打ち明けた。世界的な不景気の波が近づいていたとはいえ、当時、ロビンスの業績・財務内容に問題はなかった。酒に酔った専務の悪い冗談に聞こえたが、深刻な表情がそれを打ち消した。なかなか、事業継続が不可能となった理由を語ろうとしない専務。それもそのはず、原因を作ったのは、経理責任者として役員かつ株主であった実弟(三男)だった。
貸金業法は、「禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者」(第6条4項)の登録を拒否すると定めている。実は、三男には、違法薬物で検挙された経歴があり、そのため09年1月末に貸金業登録の更新ができない事態となったのだ。長男の専務から重たい口調で告げられた真相。しかし、X氏は、三男への怒りよりも、経営者一族に対する疑問のほうが強かった。業務上で存在感のなかった三男。なぜ、役員に入れていたのか?
代表である母親が三男をとくに可愛がっていたという印象はあった。とはいえ、その検挙歴を知っていて役員に入れていたのであれば、まったくの不注意であり、検挙歴を身内が知らないはずもない。許可業の厳しさとは、不祥事が原因で免許停止・取消などの行政処分を受け、営業そのものができなくなるという点にある。それゆえ、許可業者は、全業種のなかで最もコンプライアンスの意識を高く持たなければならない。それは、経営者のみならず、社全体にも徹底するべき重要事項だ。
ロビンスの場合は、模範となるべき経営者側がコンプライアンス違反を犯していた。灯台下暗し。会社にとって三男は、いてもいなくても支障のない存在だっただけに、年が明けて、支店単位で行われた社員への説明では、怒りの声もあがった。X氏も怒りを覚えたが、すぐに登録更新不可という事態がロビンスにとってどのような意味か、考えただけで恐ろしい未来が迫っていることに戦慄を覚えた。
活発な不動産市場のニーズを受けて融資案件が急増し、手形割引と並ぶ事業の柱になりつつあった不動産担保融資のリファイナンス。大口先数社は1社あたり15億円。全体で100物件の不動産担保を行っていた。この大爆弾が会社を債権者もろとも吹き飛ばす。のちに、X氏は、「手形割引だけをやっていれば倒産はなかった」という嘆きを何度も耳にすることになるが、当時は、リーマン・ショック後で不動産市場が低迷し、不動産担保融資で手形の切り替え(ジャンプ)が急増。1月期日の手形だけで50~60億円はあった。通常、手形の支払期日は長くても半年(2年の借入期間だと、少なくとも3回はジャンプが発生する)。登録更新ができなければ銀行取引はストップ。手形は不渡りとなり、顧客には他の金融業者に借り換えてもらうしかない。別会社に事業承継するという策を実行する時間的余裕はなかったのだ。
将来への不安で夜も眠れない年末年始が終わり、迎えた09年1月20日、鹿児島の法律事務所で銀行など一部の債権者と会合。ロビンスからは代表、専務のほか、X氏も出席し、民事再生を検討するも断念。不動産担保が確認できる場合は手形の切り替えに応じてもらう約束を交わす。同26日、第1回の債権者集会。この後、負債総額約132億円の特別清算というX氏の長い戦いが始まる。
(了)
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