熾烈な競争が予想されるNAND型フラッシュメモリ市場(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、NAND型フラッシュメモリの市場状況を見てみよう。
メモリには大きく分けて「DRAM」と「フラッシュメモリ」とがある。今まではDRAMがメモリ市場を牽引してきた。しかし、数年前からNAND型フラッシュのほうが、DRAMより市場も大きく、成長率も高くなっている。
2015年のDRAMの記憶容量は570億GBであったが、20年には1,750億GBになるとのことだ。その一方で、フラッシュメモリの15年の記憶容量は823億GBであったが、20年には5,084億GBへの成長が見込まれている。それによって、当然のことだが、韓国企業はフラッシュメモリへの大規模投資を実施している。
3次元NAND型フラッシュメモリ分野で少し出遅れていたSKハイニックスも、3次元NANDフラッシュを量産するため、清州(チョンジュ)工場に2兆2,000億ウォンの投資を決定。17年下半期には72層の3次元NANDフラッシュの量産を目指している。
日本の東芝も3,600億円を投資し、滋賀県の四日市工場を増設すると発表している。東芝はもともとNAND型フラッシュメモリの元祖であるし、技術力もあって、東芝が投資と技術開発に集中できれば、サムスン電子にとって最も怖いライバルになるだろう。
中国のXMC社もアメリカのスパンション(Spansion)社と提携して3次元NANDフラッシュの技術開発に着手した。ただ、NANDフラッシュメモリ工場の建設には、2年余りの時間が必要であるため、今後2~3年間は韓国企業の優位は保たれることが予想される。しかし、現在の莫大な投資は2~3年後の市場に何からの変化をもたらすだろう。もう1つの市場の変動要因は、東芝の半導体事業の分社化である。
東芝は先月30日に原発事業からの損失発生による財務的な懸念を解消する一方、半導体事業の投資財源を確保するため、半導体事業を分社化すると発表した。東芝の発表によると、コア事業の1つである原子力発電事業から、最大で7,000億円の損失が予想されるという。
持続的な成長が見込まれていて、また大規模な投資が必要な半導体事業を分社して、新会社の持ち株の20%ほどを売却し、投資余力を確保したいというのが分社の目的のようだ。
東芝と提携することが目されている相手は、現在の事業パートナーであり、HDDの世界最大手であるウェスタンデジタル。ウェスタンデジタルからしても、東芝は現在の事業パートナーであるし、戦略的な意味合いにおいても組みやすい相手であろう。16年第3四半期のNAND型フラッシュメモリの市場シェアはサムスン電子が36.6%で1位、東芝は19.8%で2位、3位は17.1%でウェスタンデジタルになっている。3位のウェスタンデジタルと2位の東芝が一緒になると、シェア1位に躍り出る可能性は十分ある。サムスン電子にとっては、これは大きな脅威であろう。
ウェスタンデジタル以外にも、東芝の株の買収に興味を示している会社がある。シャープを合併した鴻海(ホンハイ)グループの郭台銘(テリーゴウ)会長、それから韓国のSKハイニックス、日本のキヤノン、日本政策投資銀行などである。ところが、持ち株の売却は成功するかどうか、どの会社がパートナーになるのかは、蓋を開けてみないとわからない。もう少し時間が必要であろう。NAND型フラッシュメモリは年々、倍くらいの成長が予想されるだけに、市場の競争は激しくなりそうだ。熾烈な市場でどの会社が生き残れるのか、興味津々である。
(了)
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