2024年11月29日( 金 )

決裂した土地売買契約、争点は『3cm』(3)

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 接道義務2mを満たしていない土地を、再建築できるとして(株)九州洋行に仲介した(株)ワイズプランニング(以下、ワイズ社)。事前調査不足に加え、土地売買契約前の重要事項説明に宅地建物取引士の資格を持たない人間を向かわせたり、土地所有者となった九州洋行の同意を得ずに土地境界プレートを勝手に移動させるなど、不動産業に関わる『プロ』とは思えない行動が目立つ。土地購入代金返還等を求める裁判にまで発展した今回の件における、ワイズ社の言い分を紹介する。

事前調査不足は認めるものの・・・

 ワイズ社は “目分量”で接道義務2mを満たしていると判断し、重要事項説明書に「本物件は、前面道路に対して間口約5mありますが、持分としては間口半分の約2.5mとなると思われます」と記載した。「敷地と道路との関係図」でも「2.5m間口」と明記している。
 目測の件についてワイズ社の担当者は「コロコロ(ロードカウンター・距離測定器)で実測も行ったと話す。実測を行ったというなら、余計に接道義務2mに足りないことが、なぜ事前にわからなかったのか、不可解な話である。ワイズ社は、2mを満たしていると思っており、決して(九州洋行に再建築不可の土地を仲介したのは)意図的ではなかったとしながら、「(土地の売買契約に際して)説明は、不正確な点があったことは認める」と述べている。

 事前調査に甘さがあったとしながら、それでもワイズ社が非を認めないのは、1977年11月18日付で交付された建築物に対する確認済証の存在が大きい。建築不可能なら確認済証はおりない。つまり問題の土地は接道義務2mが満たされているというわけだ。しかし、その事実を拠り所にしているのならばなぜ九州洋行に黙って土地と土地の境界の位置を表すための標識(境界プレート)を勝手に3cm移動させたのか。これについてワイズ社は、「境界プレートは、(問題の土地の)隣家がブロック塀を築造した時にズレたと考えて、元の位置に戻した」と話す。だがこれは、土地所有者となった九州洋行に行為を秘匿した理由にはならない。九州洋行に対して後ろめたさがあったのではないだろうか。

巻き込まれた隣人

説明不足のままA氏が署名・押印を求められた立会証明書 説明不足のままA氏が署名・押印を求められた立会証明書

 ワイズ社は境界プレートを“元の位置に戻す”という目的をもって、2015年10月末、問題の土地を訪れていた。そして、隣地の土地所有者に土地の筆界(=土地の堺)の確認を依頼し、「立会証明書」に署名・押印をもらっている。これにより、ワイズ社は「正しい筆界について、確認ができているのであるから、“実測においても、間口2.0mを確保できている”ことがより明確になった。したがって、今後の確認申請や完了検査等に支障がないことは明らかといえる」と主張を開始。接道2mになるように九州洋行に知らせず3cm勝手に境界プレートをずらしているのだから、“実測においても間口2.0mを確保できている”のは当然である。

 災難なのは、このワイズ社の勝手に巻き込まれた隣家の方(以下、A氏)である。A氏は、境界プレートを元の位置に戻しに来た当時のワイズ社の様子を次のように述べている。「『急いでいるので、覚書は後からでもよいので、まず境界のプレートだけでも打たせてください』と訪問され、よく考える間もなく立ち会ってしまいました」。さらに、この時A氏はワイズ社から「(境界プレート移動後)記念に写真を撮りましょう」と言われ、これに応じている。この時の写真が、ワイズ社側の裁判資料として利用されているのだ。A氏は「(写真が裁判資料に利用されたことを知り)ひどく不愉快に感じました」と述べている。

 ワイズ社は、一貫して問題の土地を“仲介しただけ”であるから、土地購入代金返還については売主である元土地所有者に請求すべきであるという態度だ。しかし、勝手に境界プレートを移動させたのはいただけない。これは刑法262条2項の「境界損壊罪」に抵触する可能性がある。九州洋行や隣地所有者への不誠実な対応が、自らの首を締める結果になった。次回、問題の土地をめぐる第三者の動きを見ていく。

(つづく)
【代 源太朗】

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