ジャストシステムが奇跡の復活を遂げた新規事業の通信教育(後)
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かつて日本語ワープロとして一世を風靡した「一太郎」。しかしデファクトスタンダードとなったWindowsとのバンドルでシェアを急伸させてきたWordの前に敗れ、創業者はジャストシステムから去った。この苦境をどう乗り越えたのか……。
公立小学校の8割が学習支援ソフト「ジャストスマイル」を導入
キーエンスの傘下に入ったジャストシステムは、脱・一太郎を目指し、新規事業に取り組む。2年かけて通信教育事業の企画・開発に注力し、他社に先駆けて子供にも人気が高いタブレット(多機能端末)を使った新商品を開発した。
12年11月、タブレットを使った小学生向け通信教育「スマイルゼミ」を始めた。自社開発の端末を配り、教材を配信した。これが復活の号砲となった。13年に日経優秀製品・サービス賞で最優秀賞を受賞。第10回日本eLearning大賞では初等教育クラウド部門賞を受賞するなど、賞を総なめした。
タブレットを使用したシステムという斬新さや先見性が受け、会員は順調に増加。同社のホームページによると、会員登録されている個人ユーザーは690万人にのぼる。
驚くべきは、全国の公立小学校の約8割、1万7,000校で小学生向け学習支援ソフト「ジャストスマイル」が導入されていること。17年6月には小学生向け学習ソフトを発売する。タブレットやパソコンで操作でき、シェア85%を目指すとしている。
新規事業参入の鉄則を踏んで教育事業に参入
ジャストシステムのタブレット通信教育システムは通信教育業界の勢力図を塗り替えつつある。短期間で、なぜ、新規事業が成功したのか。新規事業に参入する際の鉄則を忠実に実行したことにある。
通信教育市場は有力企業がひしめく。(株)ベネッセホールディングスの「進研ゼミ」と(株)増進会出版社の「Z会」が2強だ。いずれも、幼児から大学受験の高校生まで全世代の講座をもつ。真っ正面からぶつかっても勝ち目はない。
そこでターゲットを小学生に絞った。そして、既存企業が取り入れてなかったタブレット学習に目をつけた。先発企業はペーパー学習である。赤ペンで添削したペーパーをやり取りしていたが、ジャストシステムはペーパーからタブレットに替えた。
タブレットが家庭学習のあり方を変えつつある。タブレット時代という大きな潮流に他社に先駈けて参入したジャストシステムが小学生向けでは圧倒的なシェアを握った理由だ。通信教育の王者、ベネッセはタブレット時代に乗り遅れて、進研ゼミの会員の減少に歯止めがかからなくなった。
既存企業が見向きもしない分野でシェアを確保し、流通チャネルを変化させながら、先発企業の顧客層を奪っていく。ジャストシステムは新規事業の進出の鉄則を忠実に実行していった。新規事業が成功した要因である。
(了)
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