アンチ・トランプ運動を陰で支える天才投資家ソロスの狙い(5)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
思い起こせば、東京で会談したソロス氏がこんな話を聞かせてくれたことがある。「確か1978年のことだった。ジミー(共同でヘッジファンドを立ち上げたジム・ロジャーズ氏のこと)がやってきて、こう言った。これから世界はアナログからデジタルに変わると思うと。彼の一言がきっかけで、われわれ2人はAEA(全米電子協会)の大会に参加し、1週間の間、連日10社の幹部と会談を重ねた。そして最も有望と思われる5つの成長分野を特定することができた。その上で、分野ごとに将来性のある企業をいくつか選び、投資をしたわけだ。その結果、数年後には過去最高のリターンを手にすることになった」。
要は、「徹底的に情報を集め、分析することが全ての基礎」というわけだ。ソロス氏は毎日多くの書類や書籍に目を通す。オフィスに着くと、まず「読む」ことから始める。それから関連する情報を確認するため、あちこちに電話をする。時には7時間も8時間も電話をかける。それから、また「読む」。専門家の意見も参考にするが、最終判断は自ら下す。大切なことは、何を追いかけているのか、はっきり意識して「読む」ということ。そのためにも、情報のアンテナは高く、広く掲げることが大切であろう。そして、決定と行動の間に時間を置かないこと。この点ではトランプ氏と相通じるところがある。
また、ソロス氏の口癖ではないが、「自分のアイディアは他人にひけらかさない」ことも大事だ。「投資判断については、身内や部下にも話さない」のが原則という。市場の反応を探るために、自分のアイディアを語ることもあるのだが、これはあくまで市場調査の一環に過ぎない。パーティーや社交的な集まりの場でも決してビジネスの話はしない。かつてソロス氏は「ニクソン大統領がウォーターゲート事件に巻き込まれそうだ」というニュースに接すると、即座に日本株を売り払った。なぜなら、アメリカの政界スキャンダルが日本にも波及し、株価に影響すると判断したからである。実際、その通りの展開となり、ソロス氏は大やけどを免れた。
我が国ではトランプ大統領の一挙手一投足に官民挙げて関心が集中しているようだが、ここは逆張りではないが、「アンチ・トランプ運動の陰の仕掛け人」とも目される天才投資家ジョージ・ソロス氏の言動にも大いに注目する価値があるだろう。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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