決裂した土地売買契約、争点は『3cm』(4)
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再建築不可の土地を(株)九州洋行に「再建築可能(=収益物件化可能)」と説明し、仲介した(株)ワイズプランニング(以下、ワイズ社)。取材を通して見えてきたのは、ワイズ社の軽率な行動の数々だった。取引前の重要事項説明に宅地建物取引士の資格を持たない人間を向かわせる。土地の寸法を“目測”で済ませる。問題の土地が接道義務2mを果たしていなかったと知り、土地所有者となった九州洋行に報告せず、勝手に境界プレート(土地と土地の境界の位置を表すための標識)を3cm動かす。25年以上の業歴を持つワイズ社だが、その仕事ぶりは“プロ”らしからぬものだ。
県土整備事務所も認めた資産価値の減少
問題の福岡県那珂川町今光3丁目の土地で建築工事を進めることは出来ない。建築基準法第43条1項が求める「接道義務」で定められた2mに3cm足りないからだ。第三者(賃貸不動産管理業者X社)の報告によってその事実を知ることになった九州洋行は、改めて問題の土地の実測を建築設計事務所Y社に依頼。依頼を受けたY社は問題の土地を実寸し、2mの接道義務を満たしていないことを確認。さらに、同土地を管轄区域に持つ福岡県那珂県土整備事務所・建築指導課への確認も実施。同建築指導課の担当者は、Y社の「(問題の土地の)敷地に建築が可能か確認お願いします」との問い合わせに対し「2m以上接道していない部分がありますので建築は不可となります。ただし、基準時(昭和45年)に建物が建っていて、通路部分が“2項道路という判定が出れば建築可という可能性はあります”」と答えている。
2項道路とは、建築基準法第42条2項の規定による“みなし道路”のことである。昔の住宅地は道路幅が狭いことが多いため、建築基準法施行時に「すでに建築物が立ち並んでいた道路」は、建築基準法上の道路として認める(寸法起点を2m下げることで規定に合うようにする)というもの。
Y社は早速問題の土地の通路部分が2項道路判定になるか調査を開始。昭和44年当時の現地空中写真を入手することに成功し、問題の土地は田んぼだったことか判明。住宅地ではなかったという事実を受け、同建築指導課の担当者は「2項道路としての判定は不可」としている。
Y社の調査結果を受け、九州洋行は那珂川町役場税務課に対して固定資産税の納金還付を求めた。もともと田んぼで、今後も建築工事が出来ない土地に宅地として税金を支払っていたためである。同税務課は九州洋行の求めを認め、固定資産税税額を更生し、納付済みの固定資産税に関しては過誤納金として還付した。再建築の可能性は完全になくなったのだ。ワイズ社が失ったもの
これまで、土地購入を巡る九州洋行とワイズ社の裁判を第三者の意見・行動を交えて紹介してきた。非はどちらにあるのか――係争中の案件であるため、断じることはできない。しかし、はっきり言えることが一つある。それは、今回のワイズ社の仕事は決して“プロ”と呼べるものではないということである。
当件に関するワイズ社の主張は一貫して“仲介しただけ”であるため土地購入代金等の返還義務を負うことはない。また、接道義務に関しても「昭和52年11月18日に確認済証が交付されているから2mの接道義務は果たされている」というもの。しかし、そうした態度を示す一方で、ワイズ社は勝手に境界プレートを3cmズラしたりするなどの行動を起こしている。暗に自らの至らなさを認めているといえる。
プロらしからぬ仕事ぶりと態度を露見させてしまったワイズ社。今回の九州洋行との土地売買を巡る裁判は、ワイズ社が今後不動産取引を行う際に背負わねばならないリスクになるだろう。実績を積み上げ信頼を勝ち取ることは容易ではない。しかし、信頼を失うのは一瞬である。(了)
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