中国と九州の経済交流の課題と可能性は?駐福岡中国総領事・何 振良 氏(中)
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今や世界第2位の経済大国として、政治でも大きな影響力を持つようになった中国。日本でもっとも中国に近い位置にある九州は、今後、対中ビジネスやインバウンドのさらなる発展が期待されている。とくに2017年は、日中国交正常化45周年をはじめ、さまざまな友好関係の節目を迎え、盛んに交流が行われる年となる。今回は、昨年7月に着任した、九州・山口8県を管轄する何振良駐福岡総領事に、中国と九州の経済交流における課題と可能性についてインタビューを行った。
(聞き手:弊社代表・児玉 直)
富裕層が求める日本の魅力
――現在、日本に来られた中国の方々は、どのような印象を持たれていますか。
何 爆買いのピークは過ぎましたが、これは悪いことではなく、今はリピーターが増えています。滞在期間が長くなっており、そのなかで日本の文化や温泉、食を楽しんでもらえれば自然にお金が使われますよ。
中国では今、政府が品質を高めるよう供給側の改革を進めています。1月9日にアリババグループの馬雲(ジャック・マー)会長が、アメリカのトランプ大統領(当時は就任前)と会談した際、「中国の中産階級・富裕層は2億人で、あと5年で5億人になる」と語ったそうです。5億人は、日本の人口の約5倍の数です。それが日本に押し寄せてくるとたいへんなことになりますよ(笑)。中国の富裕層が求める、安全な食品、質の高いサービス、異国文化の体験、それらがみんな日本にあるわけですから、リピーターを引っ張ってくれば、日本の観光の地盤は固くなり、発展し続けると思います。
忘れてはならないのは、日本の日用品などは、質が良いから買われているという事実です。大量に購入すると関税の負担が大きくなりますが、その分、eコマースによるビジネスチャンスが生まれているといえます。馬雲氏も、小企業の商品をネットで販売することによって5年で100万人の雇用を創出するとトランプ大統領に語っています。日本はアメリカよりも有利な立場にあります。同じ東洋文化なため、使用感に違和感がありません。たとえばアメリカの服はサイズ的に東洋人には合いませんから。
重要な『3つの自信』
――中国の研修生を日本に派遣する中国企業の副社長が、もう日本に送り出す層が減り、商売にならないと嘆いていました。この20年で、ずい分と変わりましたね。
何 中国から日本に来る研修生の受け入れ先は、レベルの高いものが求められるようになりました。もはや単純な肉体労働だけではダメだと思います。もっと高い技術が必要な仕事にしないといけません。日本は先進国といいながら、この件に関してはかなり保守的なように感じています。人口減少による難しい課題を打開するための、1つの局面だと思います。
――中国とのビジネスを検討している九州の企業に伝えたいことはありますか。
何 「3つの自信」を持つことが重要だということです。1つは、中国の発展への自信です。中国経済に関する最新データですが、中国国家統計局によると16年の実質国内総生産の伸び率は6.7%です。日本のメディアに「6年連続で成長が鈍化している」と書かれていますが、その伸び率で行けば、17年の中国のGDPは70兆元を突破し、前年比で5兆元増となります。5兆元は1994年のGDPと同じ額です。2020年まで6.5%ぐらいの成長率で発展していけば、インドが仮に7%の成長率であったとしてもGDPはインドの数倍になっています。この点をよく考えて欲しいと思います。
もう1つの自信とは、中国の世界経済増長における貢献度の自信です。16年の中国の世界経済のスピードアップにおける貢献度は1.2%で、世界経済増長における貢献度では30%超となっています。
――たしかに、世界における中国の存在感は大きくなっていますね。
何 最後の1つが、中日関係への自信です。12年からいろいろあって冷え込みましたが、そのときが底であり、今後、大きく乱れることはないと思います。14年11月に北京で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力)に際し、習近平国家主席と安倍晋三首相が会談され、関係改善に向けた4項目の原則共通認識(※1)が得られました。それらを順守すれば大きな問題は起きません。安倍首相も靖国神社への参拝(※2)をしていませんし、中日関係は、今後、大きな改善はないかもしれませんが、割と安定していくでしょう。他の分野に影響が出ないということを信じて、さまざまな交流をやっていただきたいですね。
(つづく)
【文・構成:山下 康太】※1 (1)日中間の4つの基本文書(日中共同声明(1972年)、日中平和友好条約(78年)、日中共同宣言(98年)、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明(2008年))の諸原則と精神を遵守し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。(2)双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。(3)双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。④双方は、様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して、政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。(外務省HPより)
※2 現職首相として7年4カ月ぶりとなった2013年12月26日の参拝以降、安倍首相は靖国神社への参拝を行っていない。
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