2024年11月24日( 日 )

「長崎ホテル清風」の再生に取り組む大江戸温泉物語(後)

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米投資ファンドのベインキャピタルが大江戸温泉を買収

 2015年2月13日、米大手投資ファンドのベインキャピタルは、大江戸温泉の持株会社、大江戸温泉ホールディングス(HD)(株)(現・(株)大江戸温泉ホールディングス ジャパン)を買収すると発表した。HD社長の橋本浩氏と一族から全株式を取得。負債を含む買収額は約500億円と報じられた。橋本氏は大江戸温泉を売却し、巨額の利益を手にした。投資家冥利に尽きるものだったろう。

 ベインキャピタルは11年にファミリーレストラン大手、(株)すかいらーくを買収。経営を立て直して14年10月に東証1部に再上場させ、莫大な利益を得た。大江戸温泉HDを買収したベインキャピタルは、上場させてキャピタルゲインを得るのが目的だ。すかいらーくの2匹目のどじようを狙っているのである。

温泉旅館に特化したREITで資金調達

 ベインキャピタルは大江戸温泉の上場に向けた仕掛けを導入する。ベインキャピタルが買収した大江戸温泉HDは16年3月、温泉旅館に特化したREIT(リート、不動産投資信託)の大江戸温泉リート投資法人を設立。同年8月31日、東京証券取取引所に上場した。温泉施設に特化したリートは世界初だという。

 同投資法人はまず、上場で調達した資金を使い、大江戸温泉が保有する温泉旅館を取得。施設から賃料として得る収益を投資家に分配する。大江戸温泉はリートへの物件売却で得た資金をもとに、保有する他の施設の改装や、新規物件の取得に充てる。

 大江戸温泉リートの第1期決算に当たる16年11月期末時点で、「ホテルレオマの森」(香川県丸亀市、237室)など9施設を268億円で取得。1口当たり分配金(年2回)は、第2期(17年5月末)は2,514円、第3期(17年11月末)は2,353円を計画している。

上場計画は100施設、売上1000億円の達成

 大江戸温泉のホームページによると、ホテル・旅館26カ所、温泉テーマパーク4カ所、日帰り温浴1カ所、アミューズメント1カ所を経営。16年2月期の売上高は382億円、従業員910名。

 地方の温泉旅館を買収し、半年ほどかけて改装。再開した後、旅館をリートに売却して資金を調達し、次の旅館を買収する。経営が破綻した温泉旅館を買収するわけだから、価格は安い。物件はリートに売却するので、固定費がかからない。1泊2食付で1人当たり7,000~8,000円程度から利用できる。経営を引き継ぐ前は1泊4~5万円はしていた高級旅館が安く泊まれるとあって集客力が高まった。宿泊客数は520万人を超える。夕食と朝食はバイキング方式にして人件費を切り詰めている。

 リートを活用して保有する温泉旅館を増やして、持株会社の大江戸温泉HDを上場させて、回収するという段取り。上場に向けての目標は100施設、売上高1,000億円だ。

 何かに似てないか。米投資銀行ゴールドマン・サックスが破綻したゴルフ場を束ねたゴルフ場運営会社(株)アコーディア・ゴルフを上場させたのと同じ手法だ。これぞ旅館再生ビジネスの本当の狙いである。

(了)
【森村 和男】

 

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