金正男毒殺は北朝鮮の仕業?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)氏の異母兄弟である金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害されたという衝撃的なニュースが、2月13日に報じられた。
マレーシア警察は、クアラルンプールの国際空港で飛行機の搭乗を待っていた金正男氏は、2人の女性に襲われ、顔に猛毒を塗られ、3時間後に死亡したと発表した。金正男氏は、一時は北朝鮮の後継者として見なされていたが、金正恩氏が権力を掌握してからは海外を転々とせざるを得なかった。金正男氏は、なぜ殺されたのだろうか――。
毒殺に関わった2人の女性は犯行後、タクシーに乗って逃亡したが、空港に設置された監視カメラに2人の顔が写っていたため、警察に拘束された。1人はベトナム国籍の女性で、もう1人はインドネシアの国籍であった。
マレーシア警察は、金正男氏の顔に毒物を塗った女性実行犯2人を逮捕し、犯行の動機などを調べている。女性たちは、最初は「いたずら番組だと思って参加しただけで、自分たちは何もわからなかった」と犯行への関与を否認していた。しかし、十分な訓練を受けずには実行できない仕業で、殺害犯行は計画されたものではないかと警察は判断し、2人を取り調べている。
マレーシア警察は、この女性らに犯行を依頼したとされる北朝鮮国籍の男性容疑者も監視カメラの映像を解析し、クアラルンプール近郊で逮捕している。この男性容疑者は、1年前からマレーシアに入国し、就労ビザを取得し、東南アジアの情報収集をして北朝鮮に送っていたとされている。
このほかにも6人の容疑者がこの事件に関わっていることがわかり、マレーシアの警察では6人の事件との関係解明を進めている。容疑者のなかには、北朝鮮大使館の2等書記官と北朝鮮国営航空会社である高麗空港の職員も含まれているようだ。このうち4人はマレーシアを出国し、複雑なルートで北朝鮮に戻っているようだ。北朝鮮では、この事件への関与を強く否認しているが、徐々に北朝鮮の関与が明るみに出ている。
マレーシア警察は、死因を特定するために遺体解剖を実施した結果、遺体から猛毒のVXが検出されたと発表した。
VXは猛毒の神経剤で、日本ではオウム真理教がテロ事件に使ったことで知られているものだ。化学兵器のなかでも最も毒性の強いもので、毒が広がると数分で死に至る。VXは相当な知識と訓練がないと使えないため、北朝鮮の関与の可能性はますます高まっている。(つづく)
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