2024年12月28日( 土 )

JA全農が回転ずし業界の再編の主役になる!(前)

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 全国農業協同組合連合会(JA全農)は3月1日、回転ずし最大手「あきんどスシロー」を傘下に持つ(株)スシローグローバルホールディングスに最大40億円を出資すると発表した。3月中に株式を取得。出資比率は議決権ベースで最大4%ほどになる。
 コメの生産調整(減反)の廃止を控え、コメ業界は乱世に突入した。JA全農は小売業や消費者への直接販売を拡大する。手始めがスシローへの出資。JA全農は、回転ずし業界の再編の主役に躍り出ることになる。

農業改革を受け、JA全農は直接販売に乗り出す

 回転ずし最大手(株)あきんどスシロー(以下、スシロー、大阪府吹田市)の持ち株会社、(株)スシローグローバルホールディングス(スシローGHD、水留浩一社長CEO)は3月31日に東京証券取引所の一部か二部に上場する。主幹事は野村證券(株)。需要に応じて追加売り出しを実施する予定で、追加売り出し分も含め2,100万株強を売り出す。

 スシローは2009年、投資ファンドによる株式公開買い付け(TOB)を経て上場廃止になっており、およそ8年ぶりに株式市場に復帰する。スシローGHDは現在、英投資ファンドのペルミラの傘下にある。
 3月21日に売り出し価格を決める。ペルミラは保有株を売り出して投資を回収する。外部に売り出す相手先の1つとして、JA全農が応じる。ほかに取引先であるサントリー酒類(株)やマルハニチロ(株)、日本ハム(株)なども株主になる。

 スシローは国内455店、韓国に7店を展開。スシローGHDの17年9月期の連結決算(国際会計基準)予想は、売上高にあたる売上収益が前期比8%増の1,596億円、営業利益が19%増の89億円、純利益が86%増の58億円と増収増益の見込み。

 政府・与党が進める農業改革を受け、JA全農は今年3月末に自主行動計画をまとめる予定。消費者に届くまでのコストを減らし、末端価格を安定させるために、直接販売の割合を高める方針だ。その第1弾がスシローGHDへの出資。スシローへの出資をモデルに、外食大手との直接取引を加速させる。

スシローとカッパを支配するゼンショーの野望

 この10年間の、回転ずし業界の再編の歴史を整理しておこう。

 第1ラウンドの主役は、牛丼チェーン「すき家」を運営する(株)ゼンショー(現・(株)ゼンショーホールディングス)の小川賢太郎社長。東大全共闘の闘士として安田講堂の攻防戦を戦った異色な経歴を持つ。
 07年3月、ゼンショーは突如、スシローの発行済み株式の27.2%を保有する筆頭株主として登場した。スシローの創業者である清水義雄社長と清水豊会長の間で兄弟喧嘩が勃発。ゼンショーは弟の豊氏とその家族が保有していた株式を取得したのだ。
 ゼンショーはその2週間前、当時業界首位だった「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト(株)の31.2%の株式を取得した。カッパ創業家の徳山一族が全株をゼンショーに売却。ゼンショーは、回転ずし業界の1位と2位の筆頭株主となった。自社でも(株)はま寿司を手がけており、小川氏は回転ずし業界の覇権を握る野望に燃えた。

 スシロー創業者である兄の義雄氏は、敵対的買収を撃退するため、ホワイトナイト(白馬の騎士)を招く。投資ファンドのユニゾン・キャピタル(株)である。ユニゾンは、MBO(経営陣が参加する自社買収)によるスシローの株式の非公開化でゼンショーを撃退した。ゼンショーはスシロー株をユニゾンに売却、カッパ株は徳山一族が買い戻した。小川氏は回転ずしの再編から手を引いた。

 勝利したユニゾンは12年9月、スシローの株式を英投資ファンドのペルミラに売却して巨額な利益を得た。

(つづく)
【森村 和男】

 

(後)

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