2024年11月06日( 水 )

進化目覚ましいSECCON2016!(3)

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SECCON実行委員長 竹迫 良範 氏

社会にどうやって関心を広めていくかが重要です

 ――CTF決勝に先駆けて前日に、初めてビジネスカンファレンスを開催しました。その企画意図を教えていただけますか。

 竹迫 SECCONはおかげさまで5年目を迎え、ホワイトハッカーなどCTFプレイヤーの間では大変に盛り上がってきました。ただ、それだけではダメで、社会全体にどうやって関心を広めていくかが、日本全体のセキュリティ向上のためには必要と思っています。そこで、今まで関心を持っていなかった層、とくにビジネスパーソンに焦点を当てました。当初は集客を心配しましたが、ふたを開けてみると、予想以上に集客もうまくいき、成功を収めることができました。情報システム関連部門、セキュリティ関連部門等の技術者の方に多く来場いただきました。

 テーマは「人工知能の最後の砦~人工知能は攻撃者のしもべとなるか?」「セキュリティ監視サービスって必要なの?」「今、SOC(セキュリティオペレーションセンター)が求めるのは“優秀な人材”なのか?“システムによる自動化“なのか?」「どうしてこんなにセキュリティをやらないといけないことになってしまったのか?」と4本用意しました。
 10年後の社会では当たり前となる人工知能(AI)とセキュリティとの関係、セキュリティと経営の関係、セキュリティプログラムの自動化の問題など、どれも旬なテーマであったため、満足度も高かったです。

来場者1人ひとりが、自分の好きな屋台で有意義に

 ――ビジネスカンファレンス以外にとても多くのワークショップ&カンファレンスがありました。正直、あまりにも多いので驚きました。

 竹迫 今回のコンセプトとしては、「SECCON2016決勝大会」はCTF決勝を中心とする年に1回の“お祭り”で、ワークショップやカンファレンスの1つひとつは縁日に並ぶ“屋台”みたいなものとイメージしました。従って、全体として、共通の1本の筋が通っていたわけではなく、むしろそこは求めませんでした。来場者1人ひとりが自分の好きな屋台で、食事をしたり、ゲームをしたり、就職相談したりして、有意義に過ごしてほしかったのです。

 その1つの目玉企画が、王様達のヴァイキング×SECCONスペシャルトークセッション「世界を変えるキャラクターとは?」でした。
 『王様達のヴァイキング』は、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館刊)連載の人気マンガです。名も無き18歳の天才ハッカーと天才エンジェル投資家という世界征服を狙う強力タッグが、「第五の戦場」と呼ばれるサイバー空間で、次々と起きるサイバー犯罪の大事件に立ち向かう物語です。マンガのなかでは、SECCON CTF決勝大会の模様も描かれており、ハッカーの間では、ファンも多くよく知られています。

 当日は、マンガ制作のプロセスを紐解きながら、作中に登場するサイバー事件とその背景を掘り下げていただきました。技術ネタの背景なども披露されました。エンジニアとして興味をそそられる話も多く、参加者の満足度も高かったです。また、マンガ家のさだやす氏はメディアへの露出がほとんどない方(当日も撮影禁止)だったので、マンガファンの方も多く駆けつけていただきました。

ロボットの遠隔操作が現実に起こることを証明

 もう1つ評判が良かったセッションは、「ロボットのセキュリティは安全?ロボットをハッキングしてみよう!」です。これは、韓国情報技術研究院(KITRI)のハン・ジョンフン氏に講演していただきました。現在、すでにたくさんのロボットが開発・運用されています。ここではロボットに使われるOSの1つ、ROS(Robot Operating System)に注目しています。ROSはほぼ毎年新たなバージョンがリリースされ、いろいろなロボット・マシンに使われていますが、セキュリティの脅威や安全性についてはまだ充分に検証されていないからです。

 アカデミアで研究されていた、ロボットの遠隔操作(乗っ取り)が現実に起こることを、実際に韓国の喫茶店で動いているロボットと同じ実機でコンセプト証明できたことには、大きな価値があると思います。国内ではあまり取り上げられていない分野のため、参加者の興味を引きました。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
竹迫 良範(たけさこ・よしのり)
 SECCON 実行委員長。現職は大手情報サービス会社 技術フェロー。大学卒業後、独立系ITベンチャーにて大企業向けパッケージソフトを開発、主に国際化を担当する。国内大手グループウェア研究子会社にて中長期のR&Dの傍ら、エンジニア採用、産学官連携活動と日本の人材育成に関わり、2012年に「SECCON」を立ち上げ実行委員長に就任。
 08年 Microsoft MVPアワード Developer Security、13年情報処理学会 山内奨励賞、CSS2013/MWS2013 CSS×2.0一等星を受賞。著書として『ECMA-262 Edition 5.1を読む』(秀和システム)、共著として『セキュリティコンテストチャレンジブックーCTFで学ぼう!情報を守るための戦い方』(2015年 マイナビ出版)などがある。

 

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